【お知らせ】銀幕の中のキリスト教

 初の単著「銀幕の中のキリスト教」が、キリスト新聞社から発売になりました。16年前の編著「シネマの宗教美学」(フィルムアート社)と同じく、今回も「映画+キリスト教」がテーマです。

 版元が専門書の出版社なため、一般の書店では手に入りにくいかもしれません。Amazonでも入荷するとすぐ品切れになってしまいます。実店舗で手に取りたい場合は、全国のキリスト教書店(東京なら銀座の教文館、御茶の水のCLC、オアシス新宿西口店など)に並んでいると思います。教文館のネット通販でも購入できます。

Fukushima 50

3月6日(金)公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

脚本の構成が腑に落ちない残念な作品

 2011年3月11日午後2時46分。東北地方太平洋沖で、マグニチュード9.0、最大震度7の巨大地震が発生する。だが東北各地に甚大な被害を与えたのは、自身による揺れそのものより、地震によって発生した記録的な大津波だった。福島第一原子力発電所も津波の被害を受け、主電源だけでなく予備電源まで喪失してしまう。防災マニュアルでは想定していない、まったく不測の事態だ。こまままでは熱暴走した原発内で燃料が溶け出して格納容器に穴があき、周囲に放射能をまき散らすことになる。この日原発に勤務していた職員や作業員たちは、最悪の事態を防ぐために全力で作業を開始する。全員がそれぞれ、やれることをやるだけだ。格納容器の内部圧力が設計強度の1.5倍に達し、所長の吉田昌郎は圧力を外に逃がすベントを決定。そのために必要な2箇所のバルブを手動で動かすために、作業員は二人一組の決死隊を作って放射線濃度の高い施設内に飛び込んだ。

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初恋

2月28日(金)公開 全国ロードショー

荒ぶるベッキーに注目だ!

 天涯孤独の若きプロボクサー葛城レオ。彼は体調不良を疑って診察を受けた医師から、脳腫瘍で余命わずかの宣告を受ける。手術可能だが、ボクサー生命は絶たれる。やけっぱちな気分になったレオは、夜の街で「助けて!」と叫びながらすがりついてくる若い女と、彼女を追う中年男に出会う。反射的に手が出た。プロのカウンターパンチを食らって、中年男は失神。だが殴った相手は刑事だった。逃げていたのは、やくざ組織に囲われていたシャブ中の娼婦モニカ。刑事の大伴は組織の若いやくざ加瀬とつるみ、組織に運び込まれた大量の覚醒剤を横領しようとしていたのだ。しかしただ横領したのではすぐ足が付く。だからモニカがブツを奪って逃げたことにして、彼女の身柄は闇から闇に葬ってしまえばいい。完璧に見えたシナリオ。それがレオの登場で狂い始める。一方で加瀬も、ヤクを奪う際の不手際で計画に齟齬を生じさせていた。やくざ、刑事、中国マフィアが動き出す。

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ジュディ 虹の彼方に

3月6日(金)公開 全国ロードショー

ジュディ・ガーランド最後の日々

 1968年。かつての映画スターであり歌手でもあるジュディ・ガーランドは、すっかり「過去の人」になっていた。舞台に出てもギャラはわずか。ついには宿泊費の滞納で、ホテルまで追い出されてしまう。そんな彼女に、救いの手を差し伸べたのがイギリスのショービジネス界だった。イギリスにはまだまだジュディの熱烈なファンが多い。子供たちと離れ離れになることからイギリス行きを躊躇したものの、経済的に困窮しているジュディにこれを断れるはずがない。だがこの頃の彼女は、精神的にも肉体的にもボロボロの状態だった。精神的には必要以上の上機嫌と不機嫌な状態を目まぐるしく往復し、睡眠薬とアルコールが肉体を蝕んでいく。リハーサルもろくにできないままステージに立ったジュディ。だが彼女は、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了する。スターの復活! 誰もがそれを期待したのだが、これがジュディ・ガーランドにとって最後の大きなステージだった。

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エキストロ

3月13日(金)公開 新宿シネマカリテほか

詰まっているのは映画への愛

 つくばみらい市にある「ワープステーション江戸」は、江戸時代から昭和期の街並みを再現した大型の屋外施設だ。連日多くの映画やドラマが撮影されているが、ここには施設内での撮影に市民バランティアを派遣するNPO団体ラークがある。山本耕史主演の時代劇ドラマ「江戸の爪」にエキストラとして参加している萩野谷幸三さんも、ラークから派遣されているエキストラのひとりだ。歯科技工士として男手ひとりで息子を育て、その息子も歯科技工士になった。幸三さんは息子に仕事場を譲ってセミリタイアし、比較的自由になった時間を使って、せっせと撮影現場に通っているのだ。高齢エキストラに時折あることなのだが、幸三さんも変にこだわりが強かったり、カメラが回り始めると不用意に小芝居をして、撮影現場を止めてしまうことがある。「江戸の爪」の現場でも、幸三さんは何度かカメラを止めさせたあげく、途中で腹が痛くなって現場から離脱してしまった……。

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義士始末記

1962年9月9日(日)公開 全国松竹系

忠臣蔵のエピローグ的番外編

 元禄15年12月14日。元赤穂藩士四十六人は本所吉良屋敷に討入り、吉良上野介の首級を上げて主君浅野内匠頭の仇討ちを果たした。この事件の報を受けて、江戸市民は拍手喝采。江戸城には助命嘆願のため庶民が押し寄せた。こうした人々の中に、討入りメンバーである間新六の異母姉おかつと、同じく中村勘助の恋人おしまの姿もある。特におかつは、討入り前に最後の別れに訪れた弟を、そうと知らずに冷たく追い払った負い目がある。何とか罰を受けずに、命を助けて欲しい。彼女が頼るのは、かつて隣家で私塾を開いていた儒学者荻生徂徠だ。大儒学者でありながらそんな素振りも見せず、気さくに人々と語り合える徂徠なら、きっと庶民の気持ちを代弁して赤穂義士のために助命の先頭に立ってくれるに違いない。おかつはそう考える。だが江戸城内では圧倒的多数の助命派の中で、ひとり徂徠だけが四十六士の切腹を主張していた。そのことに、おかつは衝撃を受ける。

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仮名手本忠臣蔵

1962年9月9日(日)公開 全国松竹系

赤穂義士は過激思想のテロリストだった

 元禄14年3月14日。江戸城松の廊下で、赤穂藩主浅野内匠頭が高家筆頭吉良上野介に斬りかかった。逆上する内匠頭を取り押さえるものがあり、上野介は九死に一生を得る。内匠頭は即日切腹。だがこの一大事のさなか、内匠頭の近習早野勘平は恋人おかると逢い引き中でその場に居合わせることができなかった。一方藩主の刃傷切腹により、赤穂藩は断絶。国を預かる城代家老の大石内蔵助は、幕府による片手落ちの裁定に憤る家臣たちに殉死を誓う。だがその心の中には、主君の本懐を遂げるために上野介を討ち果たすという復讐の決意があった。だがそれから数ヶ月後、内蔵助は京都の遊里で茶屋遊びにふけっていた。赤穂浪人たちの復讐を恐れる吉良方は警戒をゆるめず、内蔵助たちの身辺を疑い深く探っている。それを偽るための偽りの放蕩なのだ。江戸に先着している同志たちからは、次々に吉良方の情報が伝えられてくる。討ち入りの日は、もう目の前に近づいていた。

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地獄の黙示録 ファイナル・カット

2月28日(金)公開 全国ロードショー

これは長い長い罪の告白の物語

 1969年。米国陸軍のウィラード大尉は、待機を命じられたサイゴンのホテルから軍上層部地呼び出され、ある秘密任務を命じられる。元グリーンベレーの隊長カーツ大佐が独断で軍を離脱し、ジャングルの中に自分の王国を築いているというのだ。ウィラードに命じられたのは、カーツを暗殺することだった。ウィラードは小さな哨戒艇と、任務を知らされていない4人の部下を与えられて川を遡る。そこで彼が見たのは、戦場の混乱と狂気、そして徹底した暴力だった。ヘリコプター部隊を率いる第一騎兵隊のキルゴア中佐は、サーフィンをしたいという理由だけで海岸沿いの村やジャングルを焼き払う。ジャングルの中には突然巨大ステージが組み上げられ、プレイメイトたちが前線慰問にやって来る。国境に近い最前線の基地では、指揮官さえいない中で、ドラッグ漬けの兵士たちが見えない敵相手に発砲を繰り返している。哨戒艇は少しずつ、カーツの王国に近づいていった。

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