【お知らせ】銀幕の中のキリスト教

 初の単著「銀幕の中のキリスト教」が、キリスト新聞社から発売になりました。16年前の編著「シネマの宗教美学」(フィルムアート社)と同じく、今回も「映画+キリスト教」がテーマです。

 版元が専門書の出版社なため、一般の書店では手に入りにくいかもしれません。Amazonでも入荷するとすぐ品切れになってしまいます。実店舗で手に取りたい場合は、全国のキリスト教書店(東京なら銀座の教文館、御茶の水のCLC、オアシス新宿西口店など)に並んでいると思います。教文館のネット通販でも購入できます。

三島由紀夫 vs 東大全共闘/50年目の真実

3月20日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

そこでは言葉がまだ生きていた

 1969年(昭和44年)5月13日火曜日。東大全共闘は駒場キャンパス900番教室に、作家の三島由紀夫を招いて討論会を行った。革命を主張する左翼学生と、前年に右翼学生を集めて「楯の会」を作り、時代錯誤な保守反動の親玉のように見られていた文学者の直接対決だ。学生たちは三島を「近代ゴリラ」と笑い、「三島を舞台上で論破して切腹させる!」と息巻いた。一方で一人敵地に臨む三島は、懐に短刀と鉄扇を忍ばせていたという。壇上での討論は幾つかのテーマで区切られ、三島はそれに対して誠実に答えていく。それは学生たちの前で披露される、三島の思想のエッセンスだった。討論会は事前の思惑を裏切るように、友好的で和気藹々としたムードで終わる。この映画は当日の様子を撮影したTBSの記録映像を中心に、討論会にいたる当時の日本の世相と三島の足跡、討論会後の三島の自決、討論会に関わった人たちの現在のインタビュー等で構成されている。

続きを読む

エジソンズ・ゲーム

6月19日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

巨人ウェスティングハウス!

 1880年代のアメリカ。列車用空気ブレーキの発明で事業家としても成功していたジョージ・ウェスティングハウスは、エジソンの白熱電球に注目していた。白熱電球は世界を変える素晴らしい発明だ。しかしエジソン社が供給している直流電源システムでは、大規模な電力供給網を作ることができない弱点がある。この弱点を克服した交流発電機を入手・実用化させていたウェスティングハウスは、エジソンと手を結ぶことで全米規模の電気事業を作り上げられると考えた。だが直流にこだわるエジソンはこの提携話を拒む。こうして直流のエジソン方式と、交流のウェスティングハウス方式が、市場の覇権を争う「電流戦争」が勃発した。当初はエジソンの名声でリードしていた直流陣営だが、エジソン社で交流の研究を阻まれた天才科学者ニコラ・テスラがウェスティングハウス陣営に参加する頃から、徐々に劣勢に立たされるようになる。市場は交流派に大きく傾いていく……。

続きを読む

デッド・ドント・ダイ

6月5日(金)公開 全国ロードショー

スクリーンの中の芸能人隠し芸大会

 でっかいアメリカのど真ん中にある、ちっちゃな村センターヴィル。事件らしい事件のほとんど起きないこの村には、警官が3人しかいない。だがそこに、前代未聞の事件が起きる。村で唯一のダイナーで、店員2人が惨殺されたのだ。より正確に言うと、2人は何者かに食い殺されていた。野生動物のしわざか、それとも変質者か。若い警官のロニーは、「ゾンビかもしれない」と言う。墓地に行ってみると、確かに墓から何かがはい出したらしい穴があるではないか。やがて小さな村は、ゾンビだらけになるのだった。通りを死者が歩き回り、葬儀社でも死人が蘇り、警察でも保管中の死体が歩き始める。

 ゾンビはノロノロ歩き出し、頭部を破壊すれば死ぬ。そうとわかっていても、何しろ小さな村では生きている人より死んだ人の方が多い。次々やってくるゾンビたちが相手では、多勢に無勢。村人たちは次々ゾンビの餌食になり、あるいは新たなゾンビになってしまうのだ。

続きを読む

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

6月12日(金)公開 全国ロードショー

名作「若草物語」の最新映画版

 ニューヨークで作家修業中のジョーは、マーチ家四人姉妹の次女だ。長女のメグは既に結婚して二児の母。三女のベスは身体が弱くて、実家で母と暮らしている。四女のエイミーは資産家の伯母に連れられて、パリで絵の勉強をしている。必死の売り込みでようやく作家としての入口に立ったジョーは、まだ姉妹が実家で一緒に暮らしていた頃のことを思い出す。

 北軍の従軍牧師として出征し、長く家を留守にしている父。不在の父にかわって、一家の大黒柱となっている母。隣人ローレンス氏の思いやり。ローレンス氏の孫、ローリーとの友情。そんな中で、ベスが猩紅熱にかかったのは家族にとって大きな事件だった。しかし家族の必死の看護もあって、ベスは一命を取り留める。他人が見れば何でもない出来事も、姉妹たちにとってはかけがえのない日々だった。しかしそれから7年たった。四姉妹の少女時代は終わったのだ。時の流れは、否応なしに家族の姿を変えていく。

続きを読む

AKIRA [IMAX]

4月3日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

1980年代日本アニメの到達点と限界

 1988年。東京で新型爆弾が炸裂し、都心部は壊滅した。それから31年。東京湾を埋め立てた新首都・ネオ東京は、空前の繁栄を謳歌している。だがそこにあるのは、反政府運動の街頭デモとテロ行為、それを暴力的に鎮圧しようとするアーミー、行き場を失った若者たちのバイクによる暴走だった。そんな暴走族グループを率いる金田は、弟分の鉄雄が事故を起こして軍の施設に収容されたことに衝撃を受ける。一度は施設を抜け出した鉄雄だったが、彼は金田たちの目の前で再び軍の施設に収容されてしまった。金田は鉄雄を救出するため、反政府テログループのメンバーであるケイたちと軍の施設に潜入するが、強大な力を目覚めさせた鉄雄は自力で施設を脱出。身に着けた能力で自我を肥大させ尊大に振る舞うようになった鉄雄は、かつての仲間だった山形を惨殺。強烈な頭痛とともに頭の中で響く「アキラ」という声の正体を求め、今は廃墟となっている旧市街へと向かう。

続きを読む

Fukushima 50

3月6日(金)公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

脚本の構成が腑に落ちない残念な作品

 2011年3月11日午後2時46分。東北地方太平洋沖で、マグニチュード9.0、最大震度7の巨大地震が発生する。だが東北各地に甚大な被害を与えたのは、自身による揺れそのものより、地震によって発生した記録的な大津波だった。福島第一原子力発電所も津波の被害を受け、主電源だけでなく予備電源まで喪失してしまう。防災マニュアルでは想定していない、まったく不測の事態だ。こまままでは熱暴走した原発内で燃料が溶け出して格納容器に穴があき、周囲に放射能をまき散らすことになる。この日原発に勤務していた職員や作業員たちは、最悪の事態を防ぐために全力で作業を開始する。全員がそれぞれ、やれることをやるだけだ。格納容器の内部圧力が設計強度の1.5倍に達し、所長の吉田昌郎は圧力を外に逃がすベントを決定。そのために必要な2箇所のバルブを手動で動かすために、作業員は二人一組の決死隊を作って放射線濃度の高い施設内に飛び込んだ。

続きを読む

初恋

2月28日(金)公開 全国ロードショー

荒ぶるベッキーに注目だ!

 天涯孤独の若きプロボクサー葛城レオ。彼は体調不良を疑って診察を受けた医師から、脳腫瘍で余命わずかの宣告を受ける。手術可能だが、ボクサー生命は絶たれる。やけっぱちな気分になったレオは、夜の街で「助けて!」と叫びながらすがりついてくる若い女と、彼女を追う中年男に出会う。反射的に手が出た。プロのカウンターパンチを食らって、中年男は失神。だが殴った相手は刑事だった。逃げていたのは、やくざ組織に囲われていたシャブ中の娼婦モニカ。刑事の大伴は組織の若いやくざ加瀬とつるみ、組織に運び込まれた大量の覚醒剤を横領しようとしていたのだ。しかしただ横領したのではすぐ足が付く。だからモニカがブツを奪って逃げたことにして、彼女の身柄は闇から闇に葬ってしまえばいい。完璧に見えたシナリオ。それがレオの登場で狂い始める。一方で加瀬も、ヤクを奪う際の不手際で計画に齟齬を生じさせていた。やくざ、刑事、中国マフィアが動き出す。

続きを読む

ジュディ 虹の彼方に

3月6日(金)公開 全国ロードショー

ジュディ・ガーランド最後の日々

 1968年。かつての映画スターであり歌手でもあるジュディ・ガーランドは、すっかり「過去の人」になっていた。舞台に出てもギャラはわずか。ついには宿泊費の滞納で、ホテルまで追い出されてしまう。そんな彼女に、救いの手を差し伸べたのがイギリスのショービジネス界だった。イギリスにはまだまだジュディの熱烈なファンが多い。子供たちと離れ離れになることからイギリス行きを躊躇したものの、経済的に困窮しているジュディにこれを断れるはずがない。だがこの頃の彼女は、精神的にも肉体的にもボロボロの状態だった。精神的には必要以上の上機嫌と不機嫌な状態を目まぐるしく往復し、睡眠薬とアルコールが肉体を蝕んでいく。リハーサルもろくにできないままステージに立ったジュディ。だが彼女は、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了する。スターの復活! 誰もがそれを期待したのだが、これがジュディ・ガーランドにとって最後の大きなステージだった。

続きを読む

エキストロ

3月13日(金)公開 新宿シネマカリテほか

詰まっているのは映画への愛

 つくばみらい市にある「ワープステーション江戸」は、江戸時代から昭和期の街並みを再現した大型の屋外施設だ。連日多くの映画やドラマが撮影されているが、ここには施設内での撮影に市民バランティアを派遣するNPO団体ラークがある。山本耕史主演の時代劇ドラマ「江戸の爪」にエキストラとして参加している萩野谷幸三さんも、ラークから派遣されているエキストラのひとりだ。歯科技工士として男手ひとりで息子を育て、その息子も歯科技工士になった。幸三さんは息子に仕事場を譲ってセミリタイアし、比較的自由になった時間を使って、せっせと撮影現場に通っているのだ。高齢エキストラに時折あることなのだが、幸三さんも変にこだわりが強かったり、カメラが回り始めると不用意に小芝居をして、撮影現場を止めてしまうことがある。「江戸の爪」の現場でも、幸三さんは何度かカメラを止めさせたあげく、途中で腹が痛くなって現場から離脱してしまった……。

続きを読む

義士始末記

1962年9月9日(日)公開 全国松竹系

忠臣蔵のエピローグ的番外編

 元禄15年12月14日。元赤穂藩士四十六人は本所吉良屋敷に討入り、吉良上野介の首級を上げて主君浅野内匠頭の仇討ちを果たした。この事件の報を受けて、江戸市民は拍手喝采。江戸城には助命嘆願のため庶民が押し寄せた。こうした人々の中に、討入りメンバーである間新六の異母姉おかつと、同じく中村勘助の恋人おしまの姿もある。特におかつは、討入り前に最後の別れに訪れた弟を、そうと知らずに冷たく追い払った負い目がある。何とか罰を受けずに、命を助けて欲しい。彼女が頼るのは、かつて隣家で私塾を開いていた儒学者荻生徂徠だ。大儒学者でありながらそんな素振りも見せず、気さくに人々と語り合える徂徠なら、きっと庶民の気持ちを代弁して赤穂義士のために助命の先頭に立ってくれるに違いない。おかつはそう考える。だが江戸城内では圧倒的多数の助命派の中で、ひとり徂徠だけが四十六士の切腹を主張していた。そのことに、おかつは衝撃を受ける。

続きを読む