ゴール・オブ・ザ・デッド

ゴール・オブ・ザ・デッド

サッカースタジアムはゾンビで埋め尽くされた!

 パリのプロサッカーチームに所属するベテラン選手サム・ロリは、試合前から不機嫌だった。試合会場となるスタジアムはサムの生まれ故郷の村にあり、彼はこの村出身の唯一のプロサッカー選手。だが今から17年前、プロリーグに加盟できたかもしれない地元チームを裏切ってひとりパリに移籍したサムを、村の人たちは今も憎み続けていたのだ。そして試合開始。スタジアムに駆けつけた地元のサッカーファンからは、サムに対する容赦ない罵声が飛ぶ。なんと審判まで地元びいきで、サムの接触プレーにレッドカードの一発退場処分。腹の虫が治まらないサムは、ロッカールームで出会ったクレオという若い女を連れてスタジアムの外へ。だがその頃、スタジアムではとんでもない出来事が起きていた。サムへの憎しみから怪しげなドーピング術でゾンビ化した男が、スタジアムに乱入して周囲の人々を次々ゾンビにしていたのだ。小さな村はたちまちゾンビに埋め尽くされた!

 映画の前半と後半とで監督が違い、映画のタッチも多少異なる。映画前半はスタジアムがゾンビ化するまでを描く、比較的スタンダード(?)なゾンビホラー映画。映画後半は小さな村全体がゾンビに埋め尽くされた後、生き延びた人間たちの涙ぐましくも滑稽な奮闘を描くホラーコメディになる。こんなB級映画なのに上映時間はトータル2時間1分。IMDbやフランス版Wikipediaには140分と記載されているので、日本公開版はそれでも多少尺を縮めているようだ。映画の中にはさまざまなアイデアがぎっしり詰め込まれているので、2時間20分になっても楽しく観られる作品なのではないだろうか。(日本でもDVDなどは完全版で発売されるのかもしれない。)フランス映画は日本だと「おしゃれ」な「おとなのムード」が売りだったりするのだが、フランス本国の主流はおバカなコメディだとどこかで読んだ記憶もある。この映画はまさに徹底的におバカだ。

 ゾンビ映画には社会風刺が盛り込まれることが多いが、この映画の作り手たちもそれには十分自覚的なようだ。ここにはフランス人のサッカー熱に対する批判もあれば、有望なサッカー選手を育成しては転売し、その裏で多くの若者が使い捨てにされるサッカービジネスに対する批判もある。だがここでは、そうした社会風刺すらがパロディの対象になる。立派なご高説や哲学を語る大人たちは軒並みゾンビに食い殺され、生き残るのは子供っぽくて我が侭なバカばかり。いい年をしたオッサンたちが、警察署で子供の頃に没収されたヌンチャクを見つけ、それを振り回しながらゾンビ軍団に立ち向かっていく姿には拍手喝采だ。

 ただでさえ日本の観客には馴染みの薄いフランス映画だが、これは低予算映画なのでますます無名のキャスティング。それでも面白く観られるのは、登場人物たちのキャラクターがそれぞれ際立っているからだ。個人的にはチームの監督が気に入っている。

(原題:Goal of the Dead)

5月3日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷

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