シークレット・ミッション

シークレット・ミッション

10月11日(土)公開予定 シネマート新宿

下町に潜入した北朝鮮工作員たち

 北朝鮮の精鋭5446特殊部隊のエリート戦士ウォン・リュファンは、スパイとして韓国に潜入し、新たな指令が下されるまで身を隠している。世を忍ぶ仮の姿は、低所得者が多い下町地区で暮らす知的障害のある青年トング。近所の子供たちに石を投げられながら、彼は2年間も本国からの命令を待っている。彼が唯一心を許せる相手は、同じ地区に潜入して16年も郵便配達として働く秘密工作員のサングだけ。彼はすっかり韓国の暮らしに馴染んでしまっているが、こんなことでいざという時に祖国のために働けるのか? そんな時、リュファンの前に5446部隊でライバルだったリ・ヘランが現れる。彼は「韓国でロックミュージシャンになる」という使命を帯びて、同じ地区に潜入してきた。「祖国は俺たちが南朝鮮で堕落し裏切ると思って相互監視させるのさ」とヘランは笑う。だがやがてリュファンの前に本国からの監視員が現れ、ヘランの言葉を裏付けることになる。

 原作は韓国で人気のウェブコミック。映画も700万人近い動員を達成し、2013年の興行ランキングで5位の大ヒットになった。韓国に潜入した北朝鮮工作員を主役にした映画は、これが初めてではない。昨年の映画祭で観た『レッド・ファミリー』(2013)も、同じように北朝鮮工作員を主人公にした作品だった。「韓国内で暮らしている北朝鮮スパイ」というのは、韓国の映画やテレビドラマでお馴染みのモチーフなのかもしれない。これらの映画では北朝鮮スパイが血も涙もないモンスターではなく、血の通った生身の人間として描かれる。だがそれを冷酷に使い捨てる北朝鮮当局は、非人間的な悪そのものだ。北朝鮮の政治体制は決して容認しないが、そこに暮らす人々には同情の眼差しを向けるというのが、現状の韓国人の平均的な姿勢なのかもしれない。この映画では主人公たちがまだ若いことから、その未来を摘み取られてしまう悲劇性が強調されることになる。

 北朝鮮から苦労して韓国に潜入したスパイが、なぜか貧しい下町地区で知的障害者を演じているというミスマッチ。後からやってきた別のスパイは、よりにもよってロックミュージシャンになるという使命を帯びて髪を黄色に染めている。3人目のスパイは、まだ幼い顔立ちの残る高校生だ。ところが彼らにひとたびエンジンがかかると、猛スピードで家の屋根や塀の上を駆け抜け、目にも留まらぬ素早い格闘技術を見せるのだ。彼らがスパイだということを、映画を観ている人たちは最初から知っている。だが映画を観ているうちに、彼らが非情な訓練を受けた超エリート工作員であることを忘れてしまう。リュファン(トング)を演じたキム・スヒョン、ヘラン役のパク・ギウン、遅れて仲間となるヘジン役のイ・ヒョヌらは、普通に考えれば北朝鮮の工作員には見えないだろう。だがここでは「そうは見えない」というキャスティングを逆手にとって、映画を面白くしているのだ。

(原題:은밀하게 위대하게 Secretly Greatly)

シネマート六本木(スクリーン2)にて
配給:クロックワークス 宣伝:ポイントセット
2014年|2時間4分|韓国|カラー|2.35:1|ドルビー・デジタル
公式HP:http://secretmission-movie.com
IMDb:http://www.imdb.com/title/tt2967578/

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