ぼんとリンちゃん

ぼんとリンちゃん

9月20日(土)公開予定 新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田

オタクコンビの魔都TOKYOアドベンチャー!

 「ぼん」こと四谷夏子と「リンちゃん」こと友田麟太郎は、BLやアニメやゲームが好きなオタク趣味の幼なじみ。とある地方都市に住んでいるふたりだが、彼らは親友の「肉便器」を連れ戻すために東京にやって来る。「肉便器」とはひどいあだ名だが、本名は斎藤みゆという。彼女は半年前から東京に出て彼氏と同棲していたのだが、その後は彼氏から暴力を振るわれているとの連絡もあり、つい1ヶ月ほど前にはとうとう連絡も途絶えてしまったのだ。ぼんとリンちゃんは東京のオタク仲間である「べび」こと会田直人という四十男と、オタクの聖地・秋葉原で合流。その日はべびの痛部屋に一泊し(ここで小事件あり)、翌日から彼の協力も得てみゆの救出作戦をスタートさせたのだ。だが彼氏と同棲しているはずの部屋に強引に押しかけてみたところ、相手の男は「もう別れたからこの部屋にはいない」と言う。みゆは彼氏に黙って、デリヘル嬢のアルバイトをしていたのだ。

 映画はその時代の風俗に取材し、それぞれの時代の青春を描くものだ。援助交際の女子高生を主人公にした『バウンス ko GALS』(1997)、路上で風俗嬢をスカウトする若者を描く『PAIN ペイン』(2001)は、そうした青春映画の傑作だったと思う。これらの映画には、そこに自分の居場所を見つけようとする若者たちに対する共感が込められている。この映画の主人公はオタクだ。BLを愛する腐女子だ。オタクを主人公にした映画はこれが初めてというわけではないが、ここまでオタクに共感してその内面に肉薄して行こうとする映画はこれまでになかったのではないだろうか。例えば20年以上前にウッチャンナンチャン主演で『七人のおたく』(1992)という映画が作られているのだが、そこではオタクを風変わりな変人としてしか描いていなかった。そこに愛はない。共感はない。だが本作には対象に対する愛がある。映画にはこれが大事なのだ。

 主人公のぼんを演じるのは佐倉絵麻。この映画では劇中の全台詞のうち半分以上を、彼女がひとりでしゃべっているのではないだろうか。終盤でみゆ役の比嘉梨乃と壮絶な台詞の掛け合いを繰り広げるのだが、それまでは彼女ひとりで映画を引っ張っていく。タイトルは『ぼんとリンちゃん』だが、この映画の主役はぼんひとり。2番手としてはリンちゃんよりむしろ、桃月庵白酒が演じた中年オタクのべびが面白い。じつはリンちゃんはこの映画の中で、一番存在感が薄く動きの少ないキャラクターだ。ストーリーの上では、あまり大きな働きをしていないようにも見える。だが彼がいない残り3人でこの映画が成立するかというと、それはギスギスした変な映画になってしまったと思う。リンちゃんは何もしない傍観者として、他の3人を見守っている。彼の視点が、じつはこの映画では「観客の視点」を代弁しているのだ。ここでは高杉真宙の中性的なキャラクターが生きている。

京橋テアトル試写室にて
配給:フルモテルモ 配給協力:コピアポア・フィルム
2014年|1時間31分|日本|カラー|アメリカンビスタサイズ
公式HP:http://bonlin.jp/
IMDb:http://www.imdb.com/title/tt3699934/

ぼんとリンちゃん (竹書房文庫)
小林 啓一
竹書房
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