妻が恋した夏

10月11日(土)公開予定 K’s cinema

死んだ妻は見知らぬ男の子供を身ごもっていた

妻が恋した夏

 それはある夏の日のことだった。病気で妻のかおりを亡くした浩二は、目の前の現実に混乱していた。死因は急性くも膜下出血。その死は突然で、死んだかおり本人もそれを予期していなかったことだろう。だが浩二にとって受け入れがたいのは、妻がその時妊娠3ヶ月だったという事実だ。夫婦は最近セックスレス気味で、かおりは別の男の子供を妊娠していたことになる。相手は誰だ? 混乱する浩二は以前不倫していた玲子に再会して思いをぶちまけるが、そこで彼女から意外な話を聞かされる。玲子はちょうど1年ほど前、浩二の子供を妊娠したことがある。その時、浩二の家に乗り込んでかおりに会っていたのだという。土下座して謝るかおりを前に、玲子は子供をあきらめることにした。そんな出来事を何も知らぬまま、今日まで過ごしてきた浩二……。物語は1年前にさかのぼる。夫の裏切りにショックを受けていたかおりは、小学校時代の同級生だった中村と再会する。

 レジェンド・ピクチャーズが連作する大人の恋愛映画「ラブストーリーズ」の第4弾は、夫に裏切られたヒロインがガンで余命幾ばくもない同級生に出会って惹かれて行くというメロドラマ。脚本・監督はいまおかしんじ。出演は宮地真緒、金子昇、河合龍之介。物語はヒロインの死からはじまり、そこで明らかになった秘密が回想シーンのように提示された後で、真相を知った夫の孤独な現在に戻ってくる。一種のマヅルカ形式(回想形式)だが、過去を告白すべき主人公が既に死んでいるので、この回想シーンを回想と呼ぶべきなのかどうかがちょっとわからない。マヅルカ形式で死人に回想させる映画なら『サンセット大通り』(1950)があるわけだが、『妻が恋した夏』ではどういういきさつで回想になるのやら。映画の冒頭でヒロインがポストに手紙を投函するシーンがあるので、これを上手く使えばもう少し回想シーンも生きただろうに。現状ではなんだか中途半端だ。

 物語のアイデアの良し悪しはともかく、全体にリアリティのない映画だと思った。それは映画全体の明るいばかりで平板な絵作りであり、女優のバストトップを見せまいとする努力ばかりが目立つベッドシーンであり、突然入る登場人物のモノローグであり、浩二の部屋のエプロンであり、カウンターにあるフルーツであり、中村のカレーの屋台であり、彼が首に巻いた手拭いのホツレであったりする。この映画は細かな描写の細部が、とにかく全部ダメだ。どれもこれも嘘っぽすぎる。そこで生活している人の生活臭が感じられない。借り物の舞台の前で、場違いな俳優たちがドタバタ劇を繰り広げているだけだ。メロドラマも結構だし、難病ものでも結構だろう。しかしそれを掘り下げてドラマとして成立させるためには、細部の描写に生々しい生活のリアリティが必要だ。家の郵便受けを開きもしない男に手紙を書いて、ヒロインはどうするつもりだったのか理解に苦しむね……。

光塾にて
配給・宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
2014年|1時間28分|日本|カラー|HD
公式HP:http://www.lovestories.jp/vol4.html
IMDb:http://www.imdb.com/name/nm1241516/

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