俳優は俳優だ

11月15日(土)公開予定 シネマート六本木、シネマート新宿

芸能界の裏にうごめく誘惑と欲望と暴力

俳優は俳優だ

 ソウルのとある小劇場。そこには芝居に対する行き過ぎた情熱で、他のキャストやスタッフはおろか、観客までドン引きさせる若い役者オ・ヨンの姿があった。周囲から完全に鼻つまみ者扱いされているヨンだったが、ある日劇場の外に出ると、彼ににこやかに話しかけてくる男がいる。「わたしにマネージャーをやらせれば、あなたをあっと言う間にスターにしてみせますよ」。男の話は嘘ではなかった。マネージャーになった男はヨンを話題の新作映画に端役でねじ込むと、監督を手なずけて出演場面や台詞を増やし、端役から作品の重要な脇役にまで昇格させてしまう。この作品で脚光を浴びたヨンには出演依頼が相次ぎ、彼は一躍若手スター俳優の仲間入り。だが売れっ子になったヨンは、自分にあれこれ指図するマネージャーの存在がうっとうしい。ある現場で彼と決定的に衝突してケンカ別れしたヨンは、友人をマネージャーに雇ってひとりで仕事をするようになるが……。

 韓国の芸能界を舞台にした「ファウスト」風の物語。野心はあっても才能とチャンスに恵まれない主人公が、ひとりの敏腕マネージャーと契約することで成功を手に入れる。だがマネージャーと手を切ったところで人気は凋落。しかし最後はひとりの女の存在によって破滅を免れるが、これがハッピーエンドかどうかはわからない……。キム・ギドクが製作と脚本を担当し、監督を務めたのは『不器用なふたりの恋』(未・2010)のシン・ヨンシク。主演は本作が映画初主演のイ・ジュン。主人公が街頭でマネキンに向かって話しかける場面と舞台上の同じ場面をカットバックする導入部の意図が少々わかりにくいのだが、それ以降は物語がスムーズに流れ始めてドラマにぐいぐい引き込まれていく。主人公が性格的に問題大ありで言動がいちいち危なっかしいのだが、ハラハラしながらそれを見守らずにいられないのは演じているイ・ジュンという俳優に魅力があるからだろうか。

 物語は主人公の上昇と墜落という太いラインがあり、そこに主人公の未来の姿であるかのような「頂点から転落していく傲慢なスター俳優」と、主人公の過去の姿にも似た「現場で我が物顔に振る舞う新人俳優」の姿が二重写しにされる。主人公は自分の前を歩くスター俳優と同じ道をたどって転落し、それは彼の後から芸能界入りした次世代の俳優でもまた繰り返されるのであろう……と観客に思わせるのだ。おそらくこうした上昇と転落は、芸能界の中で何度も繰り返されているに違いない。人間が「芸能」というものに手を染めて以来、これから先も未来永劫繰り返される無限の摂理なのだ。だがキム・ギドクは最後に主人公にひとつの問題を突きつける。「お前はスターになりたいのか? それとも演じることが好きなのか?」と。頂上から転落した時になって、主人公は自分が何を求めていたのかを改めて問われることになる。

 出演シーンの少ないソ・ヨンヒが光っている。

(原題:배우는 배우다)

11月15日(土)公開予定 シネマート六本木、シネマート新宿
配給:クロックワークス 宣伝:ポイントセット
2013年|1時間38分|韓国|カラー|サイズ|ドルビーデジタル
公式HP:http://actor-movie.com
IMDb:http://www.imdb.com/title/tt2653262/

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