祝宴!シェフ

11月1日(土)公開予定 シネマート新宿、ヒューマントラスト有楽町

放蕩娘が料理人だった父のレシピを再現する

祝宴!シェフ

 高名な宴会料理人の家に生まれて料理の才にも恵まれながら、父の死後も家業を継がずに台北で売れないモデルをしていたシャオワン。だが同棲中だった恋人が莫大な借金を残して雲隠れしたことから、彼女は生まれ故郷の町に戻ってくる。そこで彼女を待っていたのは、父の食堂が潰れてもぬけの空になっている悲しい現実。食堂を継いだ母には料理の才能がなく、弟子の裏切りなどもあって残ったのは借金だけだった。母は移転先でこっそり新しい食堂を開いているが、そこも客は少なく閑古鳥。それでも亡き父の料理を慕って、宴会料理を注文してくれる客もいる。父の古いレシピを再現してほしいという老夫婦の依頼を、シャオワンは二つ返事で引き受けた。レシピ再現のあてはないが、彼女には列車の中で知り合った料理ドクターのルーハイという強い味方がいる。古いレシピは父の師匠だった料理人に聞けばいい。ついでに台北で開催される宴会料理コンテストにも出場だ!

 監督のチェン・ユーシュンは『熱帯魚』(1995)と『ラブ・ゴー・ゴー』(1997)以降は長編監督作がなく、CMを撮りながらオムニバス映画にゲスト参加する程度だったらしい。今回の映画はなんと16年ぶりの長編映画だが、2時間半近い上映時間に多種多彩な登場人物が入り乱れながら、台湾料理の歴史を紐解いてみせる堂々とした大作になっている。戦前の台湾で旅する宴会料理人が村々を回る場面を映画の冒頭とラストに置き、その精神を今に伝える料理人に歴史を語らせるのが、この映画を単なる料理バトルものとは異なるユニークなものにしていると思う。ここに登場する料理はほとんどが豪華な宴会料理だが、庶民と縁のない宮廷料理などではない。すべてが庶民の生活に根ざした、日常の食事の延長にあるものなのだ。登場する料理がそうだから、映画もまた庶民的で素朴な味がする。登場するのはそこらのおじちゃん、おばちゃん、兄ちゃん、姉ちゃんだ。

 映画の構成はゆるゆるだ。エピソードの結束がかなりいい加減に、登場人物たちの関係性なども行き当たりばったりに見える。しかし映画を最後まで観ると、決して作りが粗いわけでも、雑なわけでもない。このゆるさもまた「庶民的で素朴」な映画の味になっている。細かなエピソードが未回収の伏線になって放置されているようにも思えるが、主要なものは一通りきちんと回収されて物語の流れの中でまとめられているのだ。全体をもっと引き締めれば、映画の上映時間はあと10分や20分は削れるだろう。人物の対立や対決を、よりドラマチックに盛り上げることも出来るだろう。だがこの映画はそうした鋭利さより、ゆったりとした物語の流れにゆったり身を任せる穏やかさを選んでいる。これはこれで心地よいのだ。

 クライマックスは料理対決。審査員のリアクションで味を視覚化するのは、寺沢大介の「ミスター味っ子」の流れをくんだもの。「マンマー」には笑った。

(原題:總舖師)

シネマート六本木(スクリーン3)
配給:クロックワークス
2013年|2時間25分|台湾|カラー|スコープ|DCP5.1ch
公式HP: http://shukuen-chef.com
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3166476/

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