王の涙 -イ・サンの決断-

12月26日(金)公開予定 TOHOシネマズシャンテにて公開

実在した国王暗殺未遂事件をドラマチックに映画化

王の涙 -イ・サンの決断-

 李朝第22代国王イ・サン(正祖)は、即位した翌年に暗殺の陰謀に巻き込まれた。宮廷の奥深くに忍び込んだ刺客は直前に発見されて事なきを得たのだが、その時いったい宮廷内に何が起きていたのか? じつはこの当時、イ・サンは宮廷内で四面楚歌の状況にあった。本来なら自分より前に王になるはずだった父は、彼が幼い頃に宮廷内の陰謀事件に巻き込まれ、残酷な餓死刑で命を落とした。生きたまま米櫃に閉じ込められ、死の間際まで王に許しを請うていた父の声がイ・サンの耳から離れない。父を殺したのは宮廷内で多数派を占め、王以上の実権を手にしている老論派。イ・サン即位後も彼らはその権力を手放すことなく、かえってイ・サンに圧力をかけて意のままに操ろうとしている。しかしイ・サンは即位と同時に彼らとの対決を決意し、それから1年で宮廷内は一触即発の緊張状態にあったのだ。周囲をすべて敵の勢力に囲まれて、イ・サンの命は風前の灯火だった。

 映画に描かれている国王イ・サンの暗殺未遂事件は実在したそうだが、記録が乏しくてなぜそのような事件が起きたのかよくわからないらしい。映画ではそれを自由に脚色して、第一級の歴史エンタテインメント作品に仕上げている。宮廷内部で起きる権力闘争。あの手この手で王の力を削ごうとする勢力と、それに対抗して着々と戦いの機会をうかがう国王の目に見えない戦い。王に反旗をひるがえす将軍。秘かに時をうかがう刺客部隊。我が子の危険を知って動き出す王の生母。王の忠実な側近である宦官が抱えた秘密。それぞれの思いが入り乱れて、国王暗殺という「その瞬間」へと時は進められていく。歴史上のある出来事、ある瞬間を頂点にして、そこに向けての人間模様を積み上げていく構成は、歴史小説の大家ステファン・ツヴァイクの代表作「人類の星の時間」にも似た格調の高さ。しかもここには壮絶なアクションという、映画固有のスペクタクルも用意されている。

 政治というのは統治機構をになう官僚や他の政治家たちを動かさないことには、いつまでたっても実際に機能することがない。それは国王が国を統治していた時代であれ、首相や大統領が国の最高権力者となる時代であれ同じことだ。主人公のイ・サンが圧倒的に不利な状況に追い込まれながら状況を打開しようとする姿は、現代の政治家たちが協力政党との利害調節にあれこれ知恵を絞ったり、反対勢力の排除に苦慮したり、議会運営に四苦八苦する姿と重なり合う。もっとも現代の政治家たちは、何をしたところで政敵から暗殺部隊を送り込まれることはない。そういう意味では、君主が絶対的な権力を持っていたかに見える映画の中の時代の方が、政治家にとっては今よりよほど厳しかったのかもしれない。

 それにしても、政治家たるもの自分の仕事に命をかけていただきたい。日本の政治家の皆さんにも、ぜひ観ていただきたい映画であったりする。公開は選挙後だけど……。

(原題:역린)

シネマート六本木(スクリーン3)にて
配給:ツイン 宣伝:ムヴィオラ
2014年|2時間17分|韓国|カラー|スコープサイズ|5.1ch
公式HP: http://www.ounonamida.net/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3479208/

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