ビッグ・アイズ

1月23日(金)公開予定 TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー

有名画家の妻は夫のゴーストペインターだった

ビッグ・アイズ

 1950年代後半。夫と離婚して娘とふたりの生活を始めたマーガレットは、家具工場で絵を描く仕事をしながら、休日は売れない画家が集まる公園で似顔絵描きをしていた。そこで出会ったのが、パリに留学経験があるというウォルター。彼の本業は不動産屋だったが、今も画家になる夢を忘れられないのだという。芸術に対する彼の熱い思いと快活で社交的な性格に魅了され、マーガレットは彼と結婚することになった。何不自由のない生活を送りながら、やはり画家としては芽が出ない日々。だがウォルターが有名なジャズクラブでの展示販売を考えたところから、少しずつ風向きが変わってくる。マスコミの注目を浴びたことで、マーガレットが絵は飛ぶように売れ始めたのだ。だがウォルターはそれを「自分が描いた」と称して売っている。「今さら世間を騙してたなんて言えない」というウォルターの言葉に脅され、マーガレットは夫名義で絵を描き続けていたのだが……。

 ティム・バートン監督の新作は、1960年代に大きな目玉の子供たちの絵で一世を風靡した人気画家、ウォルター・キーンにまつわる真実の物語。ウォルター・キーンは妻に描かせた絵を「自分の作品」として売り込み、社会的にも注目されて巨額の富を手にした。だが実際のキーンは、画家に憧れながらも自分ではまったく絵の描けない男であったらしい。だが作品が生み出された動機や制作意図を言葉巧みに語る様子は堂に入っており、マスコミはまんまとそれに騙されてしまった。なんだか「現代のベートーベン」こと佐村河内守みたいな話だが、マスコミの前で芸術家として振る舞う男とゴーストライター(ゴーストペインター)の関係が「夫婦」であるところが凄まじい。映画はキーン夫妻の実話を映画的に脚色しているため、どこまでが事実なのかがよくわからないところがあるのだが、最終的にキーン夫妻(元夫妻)が法廷で絵を描いて決着を付けたのは実話だという。

 面白い話ではあるがちょっと薄味に感じられたのは、この映画から物語の面白さは伝わっても、そこにいる人間たちの気持ちが伝わって来ないからだ。自分の作品を夫に盗まれてしまうマーガレットの戸惑いや苦悩はもっと掘り下げられたはずだし、妻を金の卵を産むニワトリのように扱うウォルターの人物像も薄っぺらすぎる。いったいこのウォルターという男は何者なんだろうか? 彼がマーガレットに出会った時、彼女の絵はまだまるで売れる見込みがなかった。彼の結婚は、べつに金や才能が目当てではなかったのだ。彼はマーガレットや彼女の描く絵を愛していたはずだが、いつしかそれが金銭目的になって彼自身を不気味なモンスターにしてしまった。その人間性の変化が、この映画には描けていないのだ。物作りに関わる実在の人間たちをティム・バートンが取り上げた映画としては、『エド・ウッド』(1994)の方がずっと人間たちの真実が描けていたように思う。

(原題:Big Eyes)

GAGA試写室にて
配給:ギャガ
2014年|1時間46分|アメリカ|カラー|ビスタ|5.1chデジタル
公式HP: http://bigeyes.gaga.ne.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt1126590/

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中