味園ユニバース

2月14日(土)公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

記憶喪失の男はとんでもない歌い手だった

味園ユニバース

 服役を終えて刑務所を出てきた若い男。だが彼は何者かに拉致され、半殺しの状態で路上に放り出される。襲撃者たちが立ち去った後、のろのろと立ち上がった男はふらふらと近くの公園へ。そこでは地元のバンドが路上ライブを行っていた。何かに突き動かされるようにマイクを奪い取った男は、叩き付けるような激しさで和田アキ子の「古い日記」を歌うと、そのまま意識を失って倒れてしまう。気が付けばそこは、バンドの拠点になっている貸しスタジオの1階。バンドのマネージャーでスタジオ経営者でもあるカスミに、「あんた何者や? どこで歌ってた? 素人がいきなりあんな声は出えへん」と詰め寄られるが、男は自分の名前も過去もすべて忘れてしまっている。彼は「ポチ男」と呼ばれ、傷が癒えて記憶が戻るまで彼女の仕事を手伝うことになった。記憶を失っても歌にだけは鋭敏な反応を見せる男は、バンドのボーカリストとしてステージに立つことになるが……。

 タイトルの『味園ユニバース』は、大阪の千日前に実在する貸しホールの名前。1955年にできた味園ビルの中で当初は大型キャバレーとして営業していたそうだが、2011年以降はキャバレーの営業をやめて貸しホールになったという。映画に登場するバンド「赤犬」はそのユニバースを活動拠点のひとつとしている実在のバンドで、レパートリーはロック、ポップスから、演歌や歌謡曲にまで至るという幅広さ。映画は大阪の下町を舞台にした、昭和テイストと音楽が満載の人情劇になっている。主人公が記憶喪失というのも、かなり時代がかったシチュエーションだろう。主演は関ジャニ∞の渋谷すばると、最近は売れっ子で映画に出まくりの二階堂ふみ。監督は音楽たっぷりの学園青春映画『リンダ リンダ リンダ』(2005)を撮ったこともある山下敦弘だが、ライブシーンについては今回の映画の方がよりゴージャスでリッチな仕上がりになっていて見応えがある。

 前に進んで行こうとする時、過去が重荷になって動けなくなってしまうことがある。しかし人は、過去なしに前に進むこともできない。ポチ男のジレンマはここにある。彼は過去にどこかで歌っていたのだろう。彼は過去に、何か大きなトラブルを抱えていたのだろう。だがそれらを不問にして前に進もうとしていた矢先、彼の前に過去が大きく立ちふさがってくる。それはポチ男こと茂雄にとって、忘れ去り捨ててしまいたいものでもあり、決して忘れたり捨てたりできない大切なものでもある。人は自分の歩んできた過去を、自分勝手に取捨選択することができないのだ。

 過去から今が生まれ、今から未来が生み出される。これがポチ男(茂雄)のエピソードだけでなく、カスミのエピソードとして反復されるとドラマに厚みが出たと思うのだが、この映画はそのあたりが弱い。カスミも過去にキズを負っている人間だが、そのエピソードを上手く膨らませることができなかった。

GAGA試写室にて
配給:ギャガ
2015年|1時間43分|日本|カラー
公式HP: http://misono.gaga.ne.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3780338/

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渋谷すばる
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売り上げランキング: 13

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