ミルカ

1月30日(金)公開予定 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

インド陸上界の英雄ミルカ・シンの伝記映画

ミルカ

 1960年のローマ・オリンピック。男子400m決勝で金メダル確実と言われていたのが、当時この競技の世界記録を持っていたインド人選手ミルカ・シンだった。決勝レースでは期待通り終盤までリードを保ったミルカだったが、ゴール直前になぜか後ろを振り向くというミスを犯して4着となりメダルを逃した。だが帰国したミルカを待っていたのは、失望の声よりむしろ称賛の声だった。彼はインドとパキスタンの親善大会のインド側団長になるよう首相直々に要請を受けるのだが、これを固辞して故郷の家に引きこもってしまった。オリンピックでの出来事が心の傷になっているのだろうか? 「ぜひミルカを説得してほしい」と首相に命じられた担当大臣は、同行するミルカの元コーチたちからミルカの生い立ちやこれまでの経緯についての説明を受ける。それはインドとパキスタンの分離独立によって家族を目の前で殺され、故郷を追われたシク教徒の少年の物語だった。

 Wikipediaの日本語版で「ミルカ・シン」を検索すると、陸上選手のミルカ・シンではなく、インド人プロゴルファー、ジーヴ・ミルカ・シンの情報が出てくる。じつはこのジーヴ・ミルカ・シンは、この映画の主人公ミルカ・シンの息子なのだ。映画は1960年のインド・パキスタン親善陸上大会までを描いているが、彼はこの2年後にバレーボール選手のニルマル・カウルと結婚し、3人の娘とひとりの息子を授かっている。その息子がプロゴルファーになったというわけだ。映画はこの結婚についてはまったく語らず、選手として精進し続け頂点に登り詰めたミルカのストイックな生き方だけに焦点を当てる。主人公が陸上選手としての絶頂期を迎えるところでストーリーを打ち切り、その後の半世紀をバッサリ切ってしまうのは思い切った脚本ではないか。ミルカはまだ存命中なのだから、その後の人生についても映画になりそうなネタはいくらでもあっただろうに。

 伝記映画として回想形式を用いるのは定番の構成で、映画の中にはミルカの少年時代から現代(1960年)までがコンパクトにまとめられている。青年時代以降のミルカを演じるのは映画監督でもあるファルハーン・アクタルで、役作りのために専門のトレーニングを受けて引き締まった筋肉質の肉体を作り上げた。この体を見ただけで、もう「参りました!」と降参するしかない。映画はミルカ本人の言葉によれば「80%は事実」だというが、随所に映画的な演出や脚色を行っていることは間違いない。例えば映画の冒頭にあるローマ・オリンピックの決勝レースだが、YouTubeで実際のレースの様子を見れば、映画がいかにこのレースを劇的に脚色しているかが一目瞭然だ。しかしこれが映画であり、これぞ映画なのだ。事実そのものを知りたいなら当時の記録映画を観ればいい。この映画はインドとパキスタンの分離独立が生み出した、ある家族の悲劇がテーマなのだ。

(原題:Bhaag Milkha Bhaag)

東宝東和試写室にて
配給:日活、東宝東和 宣伝:スキップ
2013年|2時間33分|インド|カラー|シネマスコープ|Dolby Atmos
公式HP: http://milkha-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2356180/

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