陽だまりハウスでマラソンを

3月21日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館

人生はマラソン。途中で棄権することはできない!

陽だまりハウスでマラソンを

 1956年のメルボルン五輪で、ドイツ中を熱狂させたひとりの男がいた。彼の名はパウル・アヴァホフ。トップを走るソ連選手に続けて競技場に姿を現したパウルは、ゴール寸前最後のスパートをかけて1位の金メダルを獲得した。だがそれから半世紀以上がたち、パウルと妻マーゴは老いていた。両親の体調を心配する娘のビルギットは、パウルとマーゴを医療設備の充実した老人ホームに入居させる。だが淡々とただ死を待つだけの暮らしに、パウルはとても耐えられない。彼は荷物の中から古いランニングシューズを取り出すと、施設周辺の庭を走り始める。目指すはベルリンマラソンだ。周囲の視線は冷淡だが、パウルは気にしない。やがてマーゴが夫を応援するようになり、施設に入居している老人たちの中にも応援する者たちが現れた。しかしこれは、施設運営側にとっては大問題。職員たちはパウルの頭がおかしいと決めつけ、走るのを止めさせようとするのだが……。

 日本では社会の少子高齢化が問題になっているが、高齢化問題そのものは日本だけでなく世界中の先進国で起きている普遍的なテーマらしい。ここ何年かで、老人問題を扱った映画を何本か観ている。『グォさんの仮装大賞』(2012)は老人ホームのお年寄りたちがテレビ番組に出演するため施設を脱走する話だったし、テレンス・スタンプとヴァネッサ・レッドグレーヴ主演の『アンコール!!』(2012)は無愛想で通った男が敬老会のイベントで亡き妻に捧げる歌を歌う話だった。子供たちからも厄介者扱いされ、周囲の老人たちにも溶け込めない男が一念発起して何かをしでかし、それが周囲の人間関係を変えていく……というストーリー展開は、本作『陽だまりハウスでマラソンを』でも共通している。ただしこの映画は筋の運びに紆余曲折があって、なかなか一筋縄では行かない。「まだまだやるぞ!」と意気込む主人公だけが浮いていて、周囲が付いてこないのだ。

 この映画の主人公パウル・アヴァホフは架空の人物で、実際にメルボルン五輪の男子マラソンで優勝したのはフランスのアラン・ミムンだった。だがそんな虚構は映画だから許せる。それより気になるのは、主人公一家の年齢構成だ。主人公は1956年のメルボルン五輪に出場者だから、五輪出場時に20代後半だったとしても、映画の中では80歳代の後期高齢者だ。妻とは1951年に既にデートしていたと言うから、それほど年齢が離れてもいない。そう考えると娘のビルギットは、もっと年齢が上か、上に年の離れた兄や姉がいるという設定でもよかった。あるいは一度結婚して子供がいるが、離婚している中年女性にしてもいい。80歳でフルマラソンが走れるか否かは正直よくわからないのだが、家族の物語としてバックグラウンドを細かく作り込んでほしかったと思う。マラソン好きの日本でこの映画をリメイクする機会があれば、そこは十分に考慮してほしいと思う。

(原題:Sein letztes Rennen)

シネマート六本木(スクリーン3)にて
配給:アルバトロス・フィルム 宣伝:ザジフィルムズ
2013年|1時間55分|ドイツ|カラー|シネマスコープ|デジタル5.1ch
公式HP: http://hidamarihausu.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2320968/

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