パリよ、永遠に

3月7日(土)公開予定 Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町

外交官と将軍の火花散る最終交渉

パリよ、永遠に

 1944年8月24日深夜。パリの高級ホテル、ル・ムーリスは、殺気立ったドイツ将兵たちの出入りで物々しい雰囲気になっている。ホテルはドイツ駐留軍の本部になっている。軍を指揮するコルティッツ将軍は明日もパリに到達する連合軍を迎え撃つため、最後の作戦の最終確認を行っていたのだ。それはパリの主要な建物をすべて爆破して火の海にし、セーヌ川の主要な橋をことごとく落として低地を水没させるという自爆作戦だった。これによって連合軍のベルリン到着を、数週間は遅らせることができるだろう。だがコルティッツには内心の葛藤もある。ドイツの敗北はもはや確定的だ。パリを破壊しても逆転勝利は望めない。パリの破壊に戦略上の価値は何もないのだ。そんなコルティッツのもとに、中立国スウェーデンの総領事ノルドリンクがやってくる。彼はドイツ軍によるパリ破壊を阻止するため、コルティッツを説得しに来たのだ。はたしてパリは守れるだろうか?

 パリ解放直前、ヒトラーがパリを徹底的に破壊する命令を出したのはよく知られている事実。ルネ・クレマンの『パリは燃えているか』(1966)やアラン・レネの『恋するシャンソン』(1997)でも、軍人として命令に従うべきかパリを守るべきかで苦悩するコルティッツ将軍の姿が取り上げられている。今回の映画はパリ解放前夜のコルティッツが、命令遂行と中断の狭間で徹底的に悩み抜く姿にのみ焦点を当てた異色の戦争ドラマ。原作はシリル・ジェリーの戯曲「Diplomatie(外交)」で、映画の原題も同じ。舞台版に主演したアンドレ・デュソリエとニエル・アレストリュプが、映画版でも同じ役を演じている。監督は『ブリキの太鼓』(1979)の巨匠フォルカー・シュレンドフル。薄暗いホテルの一室を舞台に、登場人物も極めて限定されているという小規模なドラマだが、空間的な狭苦しさを感じさせない映画になっている。これは作り手が上手い。

 将軍と外交官の駆け引きは、徹底した言葉の応酬だ。監督はこれをボクシングに例えているが、攻撃と守備の立場は刻一刻と目まぐるしく入れ替わり、相手に少しでも隙を見せればそこを攻め込まれる。しかし攻撃中は防備が手薄になるので、そこでコツンとカウンターを当てられるとまた形勢逆転。自分の強みが弱味になることもあれば、弱味を見せることで逆に強くなることもある。だがこの試合に「引き分け再試合」はない。勝負の行方でパリの命運は決まるのだ。

 ノルドリンクもコルティッツも実在の人物だが、映画は史実の映画化というわけではないようだ。コルティッツの部屋に現れるノルドリンクは、コルティッツの内面的葛藤を引き出し語らせる「聞き役」なのだ。戦争という極限状態が生み出す非人間性や、そのことが個人の中に生み出す葛藤を、たった1晩に凝縮した1時間20分の濃密な作品。これを観ると、舞台版がどんなものなのかもちょっと気になるね。

(原題:Diplomatie)

京橋テアトル試写室にて
配給:東京テアトル パブリシティ:ムヴィオラ
2014年|1時間23分|フランス|カラー|シネマスコープ|5.1ch
公式HP: http://paris-eien.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3129564/

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