アゲイン 28年目の甲子園

1月17日(土)公開 丸の内TOEIほか全国ロードショー

28年前に封印されたチームメイトの思いとは?

アゲイン 28年目の甲子園

 坂町晴彦は46歳のサラリーマン。高校時代は野球部員として甲子園を目指していたこともあるが、今はバツイチの中年男だ。そんな彼のもとを、戸沢美枝という女子大生が訪ねて来る。高校時代の野球部メンバーを集めてマスターズ甲子園に出場しないかという誘いだったが、野球に対して苦い思い出を持つ晴彦はそれを一蹴する。だが彼女が元チームメイト松川の娘だと聞いて、彼女に他のメンバーを紹介することを約束した。高校3年の夏。地方大会の決勝にまで進んだ晴彦たちの野球部は、松川の起こした傷害事件が原因で試合出場を辞退した。野球部から甲子園の夢を奪った張本人が、松川だったのだ。だが彼は東北の震災で津波に呑まれて命を落としたという。松川が毎年書いて、投函することなく手もとに置いていた年賀状の束。「一球入魂」と書かれたそのハガキを通して、彼は何を伝えようとしていたんだろうか? 28年前に止まっていた時間が、再び動き始める。

 重松清の小説「アゲイン」を、大森寿美男が脚色監督した作品。大森監督はこれが2本目の監督作だが、前回撮ったのは『風が強く吹いている』(2009)という大学駅伝の話だった。スポーツものが得意なのかもしれないが、それより大勢の人間がひとつの目的でつながり動いていくドラマという点に共通点があるように思う。今回の映画も試合や練習のシーンがあるが、それ以上に人間ドラマの部分が断然面白いのだ。青春時代はとうの昔に過ぎ去り、苦い過去を封印して生きている大人たち。大人は多少のことでは心を揺り動かされない。たいていのことは「自分に関係があるかないか」「自分にとって損か得か」で合理的に判断し処理してしまう。それは主人公の晴彦もそうだ。彼はマスターズ甲子園への出場を固辞する。自分は決して出場しないと言い張る。彼が出場を決めたのはかつてのチームメイトとの友情に免じてのこと。しかしそれが最終的に晴彦本人を救うのだ。

 物語を引っ張るのは「28年前に何があったのか?」というミステリーだ。万年補欠選手だった松川は、なぜチームの決勝戦前日に傷害事件を起こしたのか?それが謎のままだったからこそ、チームメイトたちは釈然としない気持ちを抱えたままその後の人生を歩んでいる。28年ぶりにその松川から届いた「一球入魂」のハガキの意図は何か? なぜ彼はそのハガキを投函できぬまま手もとに置いていたのか? こうした謎は最後に氷解するのだが、このミステリーと並行して描かれるのが、離婚して離れ離れになった娘との関係を父親が修復しようとする物語。「一球人魂」には泣かされた。

 主演は中井貴一だが、彼もまた「死んだ父との関係性」に思い悩んだ経験を持つ俳優だということを知っていると、彼が美枝の肩を抱き寄せる場面にジーンとしてしまう。中井貴一はいい俳優だ。美枝を演じている波瑠は昨年『がじまる食堂の恋』に主演していたが、今回の方が印象深い。

楽天地シネマズ錦糸町(シネマ3)にて
配給:東映
2015年|2時間|日本|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
公式HP: http://www.again-movie.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3324302/

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