妻への家路

3月6日(金)公開予定 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

20年ぶりの再会。だが妻は夫の顔を忘れていた

妻への家路

 文化大革命の時代。馮婉玉(フォン・ワンイー)はバレエ団に所属する娘の丹丹(タンタン)と共に、地域の共産党幹部に呼び出される。そこで聞かされたのは、夫の陸焉識(ルー・イエンシー)が強制労働キャンプから脱走したという知らせだった。「連絡があったら直ちに通報するように」と言われて家に戻る母子。バレエ団で主役候補だった丹丹は、このことで候補から下ろされてしまう。その夜、隠れるように自宅に戻ってきた焉識を、婉玉は部屋に入れることができない。娘の丹丹は「通報したら主役に推薦する」という党幹部の言葉を信じて、父の居場所を密告する。翌日、焉識は逮捕された。それから3年後。文化大革命は終了し、焉識が20年ぶりに我が家に帰ってくる。にこやかに彼を部屋に招き入れる婉玉。だが彼女には、目の前にいる焉識が夫だということがわからなかった。彼女の記憶の中からは、なぜか夫の顔だけがすっぽりと消え失せてしまったのだ……。

 チャン・イーモウ監督がチェン・ダオミンとコン・リー主演で描く、中国現代史を背景にしたメロドラマ。往年のフランス映画『かくも長き不在』(1960)の中国版みたいなものだが、ここでは帰還した夫ではなく、夫を待つ妻の記憶が失われている。完全に記憶が消えて別人格になってしまったわけではない、彼女の中の「夫を待つ気持ち」や「夫への愛情」が消えていないのが切ない。彼女は20年間、愛する夫の帰りを待ち続けている。彼女は本当に、心の底から夫を愛しているのだ。だが彼女には、目の前に現れた夫を拒絶する。多少怪しいところはあるにせよ、他の記憶は一通り揃っているのに、夫のことだけがわからない。家に入ることを拒まれた夫はすぐ近くに住まいを構え、妻に何とか自分を思い出してもらおうとあれこれ手をつくすのだが、それがことごとく実を結ばない。お互いに深く愛し合っているにもかかわらず、記憶障害がその関係を断ち切ってしまう。

 夫の陸焉識は1977年にようやく自宅に戻ってくる。文化大革命が終わって名誉回復されたからなのだが、不在期間は20年だと言うのだから、強制労働に送られたのは文化大革命が開始された1966年よりずっと前だ。じつは中国では1957年に「反右派闘争」という共産主義体制に批判的な知識人に対する弾圧があり、陸焉識はこれに引っかかって家族と引き離されたのだ。毛沢東は1956年に「百花斉放百家争鳴」というスローガンを打ち出し、共産党体制に対する批判を自由に行うことを党員や知識人たちに奨励した。ところがそこで党に対する批判の声が大きくなると、態度を180度転回させて、共産党を批判した人たちを片っ端から「右派」として弾圧したのだ。この時代の政治犯収容所がいかに過酷だったかは、ワン・ビン監督の映画『無言歌』(2010)に描かれている。陸焉識はその過酷な生活を、家族に再会したいという思いを支えに生き延びたのだ。

(原題:歸來 Coming Home)

GAGA試写室にて
配給:ギャガ
2014年|1時間50分|中国|カラー|シネスコ|5.1chデジタル
公式HP: http://cominghome.gaga.ne.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3125472/

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