正しく生きる

3月7日(土)公開予定 シアター・イメージフォーラム

腐った世界は滅んでしまえ!

正しく生きる

 美大の制作実習室。柳田教授はオブジェ制作に没頭する学生たちの作業を見て回っていたが、ある女子学生の作品の前でピタリと足を止める。「タイトルは《愛》にしようと思います」と言う学生。だが柳田は無言のまま、その作品を床にたたき付けて破壊する。あまりにもエキセントリックな行動。だがこの日から、その学生、村上桜は柳田を追いかけ回しはじめる。同じ頃、少年院を脱走してきた3人の少年たちがいた。漫才師になることを夢見る朝雄と優樹に、大震災以来行方不明になった姉を探す圭だ。朝雄は恋人に子供が生まれているはずだと住まいを訪ねるが、彼女は子供は流産してしまったと告げて彼を落胆させる。「子供はまた作ればいいさ。そのために金を積立てとかないとな」とアルバイトに精を出す朝雄。その頃、柳田は間もなく開かれる個展に向けて、放射性物質を埋め込んだオブジェの制作に没頭していた。それを知った桜は、柳田の仕事を手伝いはじめる。

 複数の登場人物たちが織り成すドラマが、少しずつ重なり合いながら同時進行する群像劇。その中心に陣取って他を圧倒する存在感を見せるのは、岸部一徳扮する芸術家で大学教授の柳田周だ。逃れようのない生きづらさと、出口のない閉塞感、汚れて淀んだ社会の中で、ぐだぐだと生き続けることを強いられている人間たち。そこに断固として「NO!」を突きつけ、この世界の一切合切を終わりにしてケリを付けてしまおうとしているのが柳田なのだ。芸術作品を通して常に社会を挑発し、戦いを挑み続けてきた彼が、最後の最後に叩き付ける「こんな世界は消えてなくなってしまえ!」というメッセージ。『太陽を盗んだ男』(1979)のように、それで国家を脅迫しようというのではない。「俺は死ぬ。だから世界も滅んでしまえ!」という、ひどく傲慢で、我が侭で、ろくでもない、それだけにラジカルで、先鋭的で、痛快で、カッコイイなじいさんなのだ。マジですごい。

 タイトルになっている『正しく生きる』の意味はよくわからない。ただこの映画の中で柳田と対比されている登場人物たちは、「Aを目的に行動したら正反対のBになってしまった」という人たちが多いのだ。例えば「子供を守るため一緒に家を飛び出したら、自分がその子供を虐待するようになってしまった」とか、「漫才師を目指して熱心に稽古しているのに、警察に追われるようなことばかりしている」とか、「姉を探すために少年院を脱走したのに、なぜかやくざの抗争に巻き込まれてしまう」とか……。それに比べると、柳田の姿勢は一貫している。ぶれていない。自分で引いた線を、決して曲げないのだ。彼の「正しさ」は「正義」ではない。首尾一貫して、矛盾がないということだ。周囲におもねらず、他人に迎合せず、自分で決めたことを守ることだ。それは迷惑ではあるのだが、アンチヒーローとしての魅力と色気がある。この映画の中で、岸部一徳は輝いているぞ。

シネマート六本木(スクリーン2)にて
配給・宣伝:マジックアワー
2015年|1時間48分|日本|カラー|ビスタ|5.1chサラウンド
公式HP: http://www.tadashikuikiru.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4373472/

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