2月28日(土)公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
その人形には悪魔が取り憑いていた!
1969年のカリフォルニア・サンタモニカ。フォーム夫妻は仲睦まじい美男美女カップルだ。夫のジョンは医大を卒業し、インターンとして病院勤務をはじめたばかり。妻ミアは大きなお腹を抱えて、間もなく生まれてくる赤ちゃんを楽しみにしている。だがある晩、隣家で凄惨な殺人事件が起き、犯人の男女がフォーム夫妻の家にも押し入ってくる。男は警官に射殺され、女は自らノドを掻き切って自殺した。じつは自殺した女は、カルト教団に入っていたという隣家の娘アナベル。ショックを受けた夫妻はパサデナに引っ越して無事子供も生まれるが、それと前後して夫妻の周囲には奇妙な現象が起き始める。その中心にいるのは、あの事件の時、死んだアナベルが抱いていたアンティーク人形。捨ててもなぜかまた家に戻ってくる人形には、忌まわしい何者かが取り憑いているようだ。それは生まれたばかりの赤ん坊レアの命を狙っているらしい。ミアは子供を守る決意をする。
2013年に製作された実話ホラー映画『死霊館』の前日譚だが、今回は実話というわけではなくフィクション。子供が生まれたばかりの若い夫婦の周囲で次々に怪事件が起き、そこには悪魔崇拝カルトの影が……という筋立てはロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)に似ている。だがこの映画は作り手の側も十分にそれは承知の上で、わざと『ローズマリー〜』をなぞっているのだ。映画の序盤でヒロインが見ているテレビでは、ポランスキーの妻で妊娠中だった女優シャロン・テートがマンソン・ファミリーに惨殺された事件を報じている。登場する乳母車は両作品で形がそっくり。この映画の主人公夫婦の名前はミアとジョンだが、『ローズマリー〜』で夫婦を演じていたのは、ミア・ファローとジョン・カサヴェテスだった。この映画は観客が『ローズマリーの赤ちゃん』を観ていることを前提に作られている。そのこと自体が、映画の伏線なのだ。
ホラー映画は観客をある一定方向にミスリードしていくことで、意外な驚きやショックを作り出す。だがホラー映画に場慣れしている観客は、もう多少のことでは驚かない。映画の中にあるわずかな描写から「それならこう来るだろう」と先の展開を予想して、その予想はほとんど外れないのだ。ホラー映画を大量に観ている人ほど、その予測精度は上がっていく。作り手がどんなに工夫を凝らしても、その目論見は簡単に見抜かれてしまう。しかしこの『アナベル 死霊館の人形』は、先行する『ローズマリーの赤ちゃん』を丁寧になぞっていくことで、ホラー映画の見巧者を見事に裏切ることに成功する。じつはこの映画だけ観ると、ストーリーはシンプルでさほどのヒネリもない。だが『ローズマリーの赤ちゃん』を知っている人は、ストーリーを先読みしてわざわざ複雑に考えてしまうのだ。その結果、映画の結末にむしろ意外性を感じてしまうという仕掛け。これには参った!
(原題:Annabelle)
ワーナー・ブラザース映画試写室にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
2014年|1時間39分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|5.1chリニアPCM
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/annabelle/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3322940/