インヒアレント・ヴァイス

4月18日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷

ヒッピー探偵が大富豪失踪の謎を追う

インヒアレント・ヴァイス

 1970年頃のロサンゼルス。四六時中マリファナをきめてボンヤリ頭の私立探偵ドックは、目の前に現れた元カノのシャスタを見てクサが生み出した幻覚だと思った。以前と違ってすっかりカタギのなりをしている彼女は、ドックにある相談事を持ちかけたのだ。彼女が今付き合っているのは、ロスの不動産王として知られるミッキー・ウルフマン。彼には妻がいるが、彼女は自分の愛人と共謀して夫のウルフマンを精神病院に送り込むことを画策し、シャスタにも尾行が付いているという。金にはなりそうにないが、かつて愛し合った女の頼みを断れるドックでもない。まずはウルフマンと接点を作らねばなるまい。ドックは別件でウルフマンのボディガードを探す仕事を引き受けたのを機会に、怪しげな風俗店をたずねる。だがそこで彼を待ち受けていたのはバットの一撃。目を覚ました彼を待っていたのは、自分のかたわらで横たわる死体と、周囲を取り囲む警官隊だった……。

 トマス・ピンチョンが2009年に発表した長編小説「LAヴァイス」(原題は映画と同じ「Inherent Vice」)を、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)や『ザ・マスター』(2012)のポール・トーマス・アンダーソン監督が映画化した作品。主演は『ザ・マスター』にも主演したホアキン・フェニックス。原作は未読だが、物語はハードボイルド・ミステリーの形式を取っている。私立探偵のもとに、いわくありげな美女からの捜査依頼が届く。しかし手掛かりがないまま、依頼人の女は失踪。核心となる人物も姿を消し、主人公の目の前には死体がごろり。やがて事件の背後に、謎めいた組織の姿が浮かび上がってくる。とまあ、そういった感じ。しかしミステリー映画としては、これはかなりデタラメだ。主人公が手掛ける複数の依頼案件が、すべてひとつの事件につながっていくご都合主義。事件の鍵を握る人物が、中盤過ぎでも次々に出てくる。

 映画を読み解くヒントは、物語の本筋にはまったく無関係なのに、映画のナレーションを務めているソルティレージュという若い女かもしれない。彼女はドックとシャスタが交際中に彼らの側にいた友人らしいのだが(プレスにはドックの事務所の元従業員だと書かれている)、彼女はこの映画の中のではただひとり事件にタッチしない中立的な人物として描かれる。彼女ひとりが、この映画の中では部外者なのだ。そして物語のすべては、彼女の語りによって綴られていく。まるですべてが、実際にはその場にいなかった彼女の回想であるかのように。映画は彼女のナレーションではじまり、彼女のナレーションで終わる。すべては彼女の語る世界の中の出来事であり、それが実際にあったことなのか、なかったことなのかもわからない。これはすべてが現実なのか。それとも夢なのか。マリファナの酩酊やLSDが見せる幻覚もあり、すべてが現実ばなれした出来事のように見える。

(原題:Inherent Vice)

ワーナー・ブラザース映画試写室にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
2014年|2時間29分|アメリカ|カラー|1:1.85|5.1chリニアPCM
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt1791528/

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