幕が上がる

2月28日(土)公開 新宿バルト9ほか全国ロードショー

新任美術教師は学生演劇の女王だった!

幕が上がる

 県立冨士ヶ丘高校の演劇部に所属する高橋さおりは、地区大会の敗退と同時に3年生が引退すると、新しい部長として演劇部をまとめることになった。同じ2年生で親友の橋爪裕子(ユッコ)と西条美紀(がるる)が、彼女を新部長に指名したからだ。4月になって新入生勧誘のため体育館で「ロミオとジュリエット」を上演するが、自分としても不本意な仕上がりで観客の反応もゼロ。気落ちしている彼女に声をかけたのは、新任の美術教師・吉岡美佐子だった。演劇や演技に対して的確な指摘をし、即興演技で目の前の生徒たちを唖然とさせた吉岡先生の正体は、大学時代に「学生演劇の女王」と呼ばれた舞台女優だった。彼女のアドバイスを受けてめきめき上達していくさおりは、ある日、吉岡先生から意外なことを告げられる。「あなたたち全国大会に行く気はある?」。冨士ヶ丘高校は地区大会も突破したことがない弱小演劇部だ。でも先生の目には熱と気迫がこもっていた。

 平田オリザの同名小説を、本広克行監督が映画化した青春映画。脚本は『桐島、部活やめるってよ』(2012)の喜安浩平で、主演はももいろクローバーZの5人。ももクロ出身者では早見あかりが『百瀬、こっちを向いて。』(2014)で初々しい演技を見せていたが、今回の『幕が上がる』もそれに負けず劣らず素晴らしい映画になっていると思う。本広監督は『踊る大捜査線』シリーズの監督として紹介されることが多いし、事実それ以外にはこれといった代表作に恵まれていなかったのだが、今回の映画は監督にとって新しい代表作のひとつになるのではないだろうか。吉岡先生役の黒木華が素晴らしい。実際に大学時代から舞台に立っている彼女は、まるで自分自身を演じるようにこの役に命を吹き込む。女たちの熱くてタイトなドラマに、ムロツヨシが生ぬるい笑いを差し挟んで行くのも良い。これは冷笑でも爆笑させてもだめで、この生ぬるさが映画には必要なのだ。

 高校演劇というのは存在は知られていてもマイナーな世界だと思う。僕が高校生の頃にも演劇部の生徒が学校のあちこちで発声練習をしていたが、ほとんどの高校生にとって演劇部のイメージは今も同じようなものなのではないだろうか。演劇部は知っていても、その上演なんて誰も観たことがない。映画には主人公たちが出場する大会の様子が出てくるが、舞台を観ているのは他校の出場者や関係者だけで、同じ学校から応援に来る生徒なんてまずいない。小さな世界だ。弱小演劇部が短期間の特訓で、全国大会を目指せるぐらいに層が薄い世界でもある。(結局は指導者と所属している生徒の才能次第ということなのかもしれない。)だからこそ、この映画に出てくる高校演劇は熱いのだ。小さな世界だからこそ、燃えるのだ。でもその世界の一歩外側には、広大な演劇や演技の世界がある。美佐子が主人公たちを東京に連れ出し、その世界の一端を垣間見させるシーンは感動的だ。

TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン4)にて
配給:ティ・ジョイ 配給協力:東映
2015年|1時間59分|日本|カラー|サイズ|サウンド
公式HP: http://www.makuga-agaru.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4173442/

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中