真夜中のゆりかご

5月公開予定 TOHOシネマズシャンテ

小さな命が人々の運命を狂わせる

真夜中のゆりかご

 「近所でひどい怒鳴り声と悲鳴が聞こえる」という通報を受けて、刑事のアンドレアスと相棒シモンは低所得者向けアパートの一室を訪れる。そこにいたのは、かつてアンドレアスが逮捕したことのある麻薬常習者トリスタンと恋人のサネ。アンドレアスはそこで、クローゼットに押し込められている赤ん坊を見つける。自らの糞尿に汚れた赤ん坊は、どう見てもまともに世話をされていないように見える。だが調べてもトリスタンやサネから麻薬使用の証拠が出なかったことで、一時保護された赤ん坊は再び彼らのもとに戻された。同じような月齢の子供を持つアンドレアスは、その赤ん坊が不憫でならない。だがそれから間もなく、アンドレアスの家では赤ん坊が突然死んでしまう。妻のアナは泣き叫び、子供が死んだら自分も自殺すると言い張った。思いあぐねたアンドレアスが思い出したのは、あの赤ん坊のことだった。彼は死んだ赤ん坊を抱いて、トリスタンの部屋に向かう。

 ハリウッドで『マイ・ブラザー』(2009)としてリメイクされた『ある愛の風景』(2004)や、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『未来を生きる君たちへ』(2010)のスサンネ・ビア監督の新作。同じ月齢の子供を持つ2組のカップルの関わりを通して、親子の絆や心の中の闇を描き出すサスペンスたっぷりのヒューマンドラマだ。登場人物たちは誰もが、不完全な欠点だらけの人間として描かれている。悪人や善人に見える人たちも、その一面だけでは捉えられない複雑さを持っている。真面目な刑事アンドレアスは悪人は犯罪に手を染める。彼の相棒シモンはアルコール依存症の気がある。アンドレアスの妻のアナは両親と上手くいっていないらしく、精神的にもろいところがある。映画の中でだらしがないカップルとして描かれるトリスタンやサネも、子供を邪魔者扱いして育児放棄をしているようにも見えるが、じつは彼らなりに自分の子供を愛しているのだ。

 しかし僕はこの映画を観ながら、どうしても理解に苦しむところがあった。それは「赤ん坊の遺体」の扱いについてだ。アンドレアスは「子供を失った妻の悲しみを和らげたい」という気持ちと、「トリスタンの子供を保護したい」という気持ちから、死んだ我が子の死体をトリスタンの赤ん坊とすり替えてしまう。これがわからないのだ。死んでしまっても我が子は我が子だから、それを赤の他人の家に放置するなんて感覚的にあり得ないと思う。もっとも遺体に対する考え方は国や民族によってだいぶ異なる。日本では遺体を火葬にするのが普通だが、これを「ひどい!」と感じる人たちだっているのだ。逆に遺体にまったく執着しない文化もあり、それは日本人から見ると「ひどい!」と感じるだろう。この映画に描かれていることに違和感を感じるのは、僕が日本人だからなのか。でも「赤ん坊が死にました。じゃあかわりに別の赤ん坊を連れて来たからOK?」はヘンだよね。

(原題:En chance til)

京橋テアトル試写室にて
配給:ロングライド 宣伝:クラシック
2014年|1時間42分|デンマーク|カラー|シネマスコープ|5.1ch
公式HP: http://www.yurikago-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3305316/

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