涙するまで、生きる

初夏公開予定 イメージフォーラム

アルベール・カミュの短編小説を映画化

涙するまで、生きる

 1954年のアルジェリア。ダリュは山間部にある小さな学校の教師だ。世間ではアルジェリア独立を巡るきな臭い動きもあるが、彼は地元の子供たちに基本的な読み書きを教えることに満足していた。ある日のこと、近くの町にいる顔見知りの憲兵が、若いアラブ人の男モハメドを連れてやって来る。モハメドはいとこ殺しで捕まった犯人で、半日ほど歩いた場所にあるタンギーの町の憲兵本部まで連行しなければならない。憲兵は人手不足を理由に、その仕事をダリュに押し付ける。ダリュはモハメドの縄を解いて逃がそうとするが、彼は「タンギーまで送ってくれ」と言って聞かない。やがて町からは、モハメドに殺されたいとこの身内が復讐のために押しかけてくる。これを追い払えば、次は家畜殺しの犯人を探す一段がやって来てモハメドを引き渡せと言い出す。ダリュはこうしたやりとりの中で、何とかモハメドをタンギーまで送り届けてやろうと考えるようになるが……。

 原作はアルベール・カミュの短編「客」(日本では「転落・追放と王国」というタイトルの中短編集に収録されている)。映画は原作の中間部分を大きく拡張して、独立戦争が勃発した1954年のアルジェリアの様子を再現している。監督のダヴィッド・オールホッフェンはフランスの映画監督だが、作品が日本に紹介されるのはこれがはじめて。主演はヴィゴ・モーテンセンとレダ・カテブ。主人公たちの旅を描くロードムービーであり、赤の他人の男同士が共に旅をする中で絆を深め、友情を培っていくバディムービーでもある。囚人がからんだバディムービーという意味では『手錠のまゝの脱獄』(1958)や『網走番外地』(1965)にも似ているのだが、囚人のモハメドが脱走するのではなく、むしろ捕らえられて処刑されることを望んでいるというのがユニーク。護送のダリュも普通の映画と逆で、何とかしてモハメドを無事に逃がしたい、解放したいと思っている。

 オールホッフェン監督はこの映画をウェスタン(西部劇)のつもりで撮ったのだという。言葉よりも銃がものを言い、暴力がはびこる世界。横行する私刑。乾いた砂漠と岩山ばかりの風景を、砂塵をかき立てて疾走する騎馬。囚人を護送する善良な男。酒場の心優しい娼婦たち。確かにこれは西部劇の世界かもしれない。主演のヴィゴ・モーテンセンは劇中でフランス語とアラビア語を使っているのだが、アルジェリアを舞台にしたフランス映画にアメリカ人のモーテンセンをあえて起用したのは映画にウェスタンの雰囲気を持ち込むためだったという。

 映画の前半は結構ハードボイルドだが、主人公たちが互いの内面を語り始めるあたりからヒューマンドラマ路線に切り替わる。モハメドと関わりになるのが嫌で彼を逃がそうとしていたダリュが、モハメドと深く関わることで彼を逃がそうとするようになるのだ。彼らは単なる旅の同行者から、互いに生涯忘れ得ぬ友人になるのだ。

(原題:Loin des hommes)

京橋テアトル試写室にて
配給:RESPECTレスペ、スプリングハズカム 配給協力・宣伝:太秦
2014年|1時間41分|フランス|カラー|シネマスコープ|5.1ch
公式HP:
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2936180/

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