蒼の乱

5月9日(土)公開予定 新宿バルト9ほか全国ロードショー

東国で乱を起こした男と彼を愛した女

蒼の乱

 京の都が日本の政治の中心で、貴族たちが庶民に重税を課して贅沢三昧の暮らしをしていた時代の物語。とある貴族の屋敷に招かれのは、大陸から渡ってきた渡来衆の一族。宴の座興にと請われた占いで出たのは、国家を揺るがす大乱の兆しだった。なんと不吉な。けしからん。こやつらを討て。皆殺しにせよ! だがそんな貴族の横暴に腹を立てた坂東武者の将門小次郎は、渡来衆の女・蒼真と桔梗の手を引いてからくも屋敷を脱出。警護の侍たちに追われる彼らを救ったのは、帳の夜叉丸と名乗る若い男だった。彼は小次郎たちを西海の名高い海賊・伊予純友に引き合わせる。じつは純友は蒼真と同じ渡来衆の生き残り。腐りきった朝廷や貴族たちにはウンザリだ。かくなる上は西海で純友が、坂東で小次郎が兵を起こし、西と東から都を挟み撃ちにする形で日本をひっくり返すのだ。小次郎は故郷に戻ると坂東を平定し、蝦夷と力を合わせて東国に独立国を作ろうとするのだった。

 劇団☆新感線の舞台を10数台のHDカメラで撮影し、舞台の臨場感と舞台以上の迫力をスクリーンの上で再現する「ゲキ×シネ」の最新作。平安時代中期に起きた平将門の乱と藤原純友の乱(両方合わせて承平天慶の乱)をモチーフに、虚構をたっぷりとまぶしたスペクタクル・エンタテインメントになっている。主人公の蒼真を演じるのは天海祐希。その夫となる坂東武者・将門小次郎に松山ケンイチ。蝦夷の大王・常世王に平幹二朗。桔梗には新感線の看板女優・高田聖子。謎の剣士・帳の夜叉丸役で素晴らしい殺陣を披露してくれるのは早乙女太一。京の都を振り出しに、西は瀬戸内海、東は坂東まで舞台が移動し、さらに登場人物たちの視野に大陸まで入っているという空間的なスケールの大きさ。しかし登場人物の出し入れに少し難点があって、観ながら少し首をかしげることになってしまった。ゲキ×シネ版は原作舞台をだいぶ縮めているが、原因はそこではないと思う。

 この物語は主人公を追いにくいのだ。物語の前半でドラマを引っ張っていくのは将門小次郎なのだが、彼が途中で姿を消してしまい、その後は妻の蒼真がドラマの主人公になる。それならそうと、蒼真は前半でももっと積極的に動かしておくべきだったのではないだろうか。前半の蒼真は完全な受け身のヒロインで、動いていく物語の中を為す術もなく流されていく。小次郎と夫婦になったのさえ、一族の掟という外的要因によるものだ。前半で光っているのは小次郎で、蒼真はそれを見つめる傍観者に過ぎない。だがその小次郎は、物語から突然消えてしまう。ここでドラマは断絶し、最後までちぐはぐなままクライマックスに突入する。個々の登場人物たちの葛藤や身の処し方は、別に不合理なものではないかもしれない。個別に見ていけば理解できるし、同情できるものでもある。でもそれがドラマの大きな枠の中で、収まるべき場所にうまく収まらずにふわふわ浮いているのだ。

アキバシアターにて
配給:ヴィレッヂ、ティ・ジョイ 宣伝協力:シンカ
2015年|2時間48分|日本|カラー|シネスコ|5.1chサラウンド
公式HP: http://www.aonoran.com/
IMDb:

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