夏をゆく人々

8月22日(土)公開予定 岩波ホール

口からハチがぞろぞろにドン引き!

夏をゆく人々

 イタリア中部のトスカーナ地方で、伝統的な養蜂業を営む一家がいる。父親のヴォルフガングに、母のアンジェリカ、そして4人の娘たち。長女のジェルソミーナは父の優秀な助手として欠かせない存在であり、時には幼い妹たちの世話を焼く母親代わりの役目も期待されている。独断専行型で家族の中でしばしば暴君のように振る舞う父を手伝い、父と家族の接点となっているのがジェルソミーナなのだ。だがある日、父が家にひとりの少年を連れてくる。彼の名はマルティン。非行少年更生プログラムの一環として養蜂の仕事を手伝うようになった彼に、父のヴォルフガングはまるで息子ができたかのように接するようになる。ジェルソミーナの気持ちは複雑だ。ある日一家は、近くの古代遺跡で撮影をするテレビクルーと出会う。エトルリア文明の末裔である一家が参加するコンテスト番組だという。ジェルソミーナはその番組に家族で出場することを願うが、父は大反対だった。

 2014年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。この賞はパルムドールに次ぐ大きな賞で、21世紀になってからはミヒャエル・ハネケ、アキ・カウリスマキ、パク・チャヌク、ジム・ジャームッシュ、ブリュノ・デュモン、河瀬直美、ジャック・オーディアール、ダルデンヌ兄弟、マッテオ・ガローネ、コーエン兄弟などそうそうたる顔ぶれの受賞者が並ぶ。本作のアリーチェ・ロルヴァケル監督はこれが長編2作目で、年齢も30代前半という若さ。名物らしい名物が何もないイタリアの田舎町を舞台にした物語で、出演者もTV司会者役のモニカ・ベルッチ以外はほとんどが無名という作品での受賞は快挙に違いない。ただし僕はこの映画を観ていても、正直なところ内容がよく理解できなかった。そもそも家族構成がよくわからない。例えば映画終盤でトラブルメーカーになるココという女性は、いったい何者なんだろうか? 家族の友人アドリアンは何者なのか?

 映画はすべてを説明することがない。説明することなく、観客にそれを想像させる。想像させることで、観客に対して映画への参加をうながす。観客もまたこの映画の中に入り込み、ジェルソミーナやヴォルフガングと同じ景色を見ながら、そこで起きている事を感じ取る必要があるのだ。しかしそれでも、僕はこの映画が説明不足に感じた。映画の終盤からラストにかけての描写など、僕は観ていてもさっぱりわからなかった。あれは現実の風景なのか。それとも何らかの心象風景として描写されているものなのか。家族は一体感を取り戻すのか。それともバラバラになってしまうのか。危ういバランスの上にかろうじて立ち止まっていた家族が、何らかの動きを見せたことは間違いない。しかし彼らがどこに向かったのかはわからない。すべては謎のまま、観客はその場に放り出されてしまう。一度は映画の中に入り込んで世界を共有していたはずなのに、気づいたら独りぼっちだ。

(原題:Le meraviglie)

京橋テアトル試写室にて
配給:ハーク 配給協力:アークエンタテインメント 宣伝:テレザ、サニー
2014年|1時間51分|イタリア、スイス、ドイツ|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル
公式HP: http://natsu-yuku.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3044244/

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中