予告犯

6月6日(土)公開予定 全国東宝系

動画投稿で犯行を予告する男の目的は?

予告犯

 吉野絵里香を班長とする警視庁のサイバー犯罪対策課は、動画投稿サイトに掲載される「シンブンシ」と名乗る男の犯行声明をマークしていた。新聞紙のマスクで顔を隠した男は、これまでに数件の犯行予告を行い、それを言葉通りに実行している。今回の犯行予告は食中毒事件を起こした食品加工会社に対する制裁だったが、会社は予告通り何者かに放火された。ネットではシンブンシの評判が高まり、彼を英雄視する者や模倣犯さえ現れる。サイバー犯罪対策課は配信された映像を分析し、シンブンシが単独犯ではなく複数犯であることを突き止めていた。いったい彼らは何者で、何の目的があって犯行を繰り返しているのか? シンブンシは新たな犯行予告で、この機に乗じてネット利用を規制しようとする国会議員の抹殺を宣言。これには公安が素早く対応して、ターゲットとなった議員の周囲を厳重な警備が取り囲む。シンブンシのメンバーは、警察を出し抜けるのだろうか?

 筒井哲也の同名コミックを、中村義洋監督が映画化したサスペンス映画。脚本は『ゴールデンスランバー』(2010)や『みなさん、さようなら』(2013)、『白ゆき姫殺人事件』(2014)でも監督とコンビを組んだ林民夫。インターネットを使った動画による犯行予告と実行の生中継というアイデアに加えて、シンブンシが活動拠点にしているのが漫画喫茶という道具立ての今日性がまずユニーク。派遣労働者を使い捨てにするブラック企業。アルバイト店員によるイタズラ動画投稿。SNSによる不用意な発言と炎上。これは紛れもなく2010年代という「いまこの時」の風俗を切り取った映画になっている。おそらくこの原作が発表された時点では、ISILのような過激派組織が動画投稿を使って犯行予告と犯行の中継を繰り返し、世界中から参加者を募るような自体は想定されていなかっただろう。この映画は期せずしてネットワークテロの姿を描いてしまった。

 あれこれ道具立ては新しい映画なのだが、中身は結構古くさいメロドラマなのが気になる。あまり細かなことを書いてしまうと未見の人に配慮がないと言われそうだが、シンブンシたちの本当の動機があんなことでした……というのはどうなのだろう。大山鳴動して鼠一匹とは言わぬまでも、さんざん世間を引っかき回した挙げ句に、シンブンシたちの行動が仲間内で閉じていくところに、少しはぐらかされたような印象を持つのだ。だがむしろこれが、現代日本社会のリアリティなのかもしれない。革命だの世直しだのと言っても、今は誰もそんな言葉を信じない時代になってしまっているのだ。むしろ信じられるのは、目の前にある小さな善意や小さな幸福だ。行きつけのラーメン屋で看板娘の少女がギョウザをおまけしてくれたり、突然の雨にカサを貸してくれたりする喜び。仲間と揃って心置きなく「回ってない寿司」を腹一杯食べる幸せ。そこにこそ、この物語の原点がある。

TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン4)にて
配給:東宝
2015年|1時間59分|日本|カラー|シネマスコープ
公式HP: http://www.yokoku-han.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3952226/

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中