フレンチアルプスで起きたこと

7月4日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町

そのとき男は家族を置き去りにした

フレンチアルプスで起きたこと

 フレンチアルプスの高級スキーリゾートにやってきた、スウェーデン人の一家4人。ホテルの眼前に広がるのは、雄大なアルプスの山々。天候にも恵まれ、雪質も良好。だが家族水入らずの楽しい休暇は、滞在2日目に起きた出来事で一変する。それは雄大な山を目の前にしたレストランのテラス席で、家族が揃って食事を取ろうとしていたときだ。雪崩事故予防のため人工雪崩が、勢い余って家族のいるテラスまで突進してきたのだ。雪煙に包まれ、パニック状態になるレストラン。母親は悲鳴を上げる子供たちを抱きかかえて、その場にしゃがみ込むしかなかった……。結局雪崩はレストランの手前で止まっていたのだが、雪煙が晴れるとその場に父親の姿がない。何と彼は家族を置き去りにして、ひとりで逃げ出していたのだ。笑いながら席に戻る父を、妻と子供たちがにらみつける。だが夫婦の決定的な亀裂はこの後にやって来た。なんと夫が自分の行動を否定しはじめたのだ。

 これは観た人に「あなたならどうしますか?」「あなたはどう思いますか?」という強烈な問いを投げつける映画だと思う。この映画はぜひ夫婦で、恋人同士で観てほしい。映画には主人公夫婦から雪崩に関する顛末を聞かされた友人カップルが、その後も一晩中そのことについて語り合うエピソードが出てくる。映画を観れば、主人公たちそれぞれの行動について、いろいろな感想が出てくるに違いない。それは共感かもしれないし、同情かもしれない。反発かもしれないし、嫌悪感かもしれない。いずれにせよ、これは観る人の心をいろいろな意味で深くえぐる作品だ。自分が同じ立場にあったら、どう振る舞うだろうか? 逃げ出すだろうか? もし自分だけが取り残されて、相手が逃げてしまったら? おそらく多くの男性はこの映画を観て、「俺は絶対に逃げない」と言うだろう。でも実際その場でどうなるかは誰にもわからない。だから問われるのは、その後のことなのだ。

 とりあえず僕は「自分が逃げた」という前提で考える。雪崩が襲ってきてパニックになり、気がついたら自分ひとりで安全な場所まで逃げていた。家族のところに戻ったら、「いや〜、ひとりで逃げちゃったよ。ゴメンヨ〜。悪い悪い。頭真っ白でパニックになっちゃった。意外とおれもダメなヤツだな。あ、意外でもないか……。ヘヘヘ。スンマセン!」と笑い話にして頭下げちゃうけどね。その後もしばしば、自分でそれを笑い話にする。「とりあえず全員無事でよかったね」というところに話を落とし込む。でも主人公の男はそうできなかった。彼は自分が家族を置き去りにして逃げたという事実を受け入れられない。「俺は逃げていない!」と言う。妻に対して「俺が逃げたという君の意見は、君の個人的な見解に過ぎない。俺には俺の見解があって、それは君とは違う!」などと言う。でも僕はこれも非難できないのだ。いざとなれば、自分もそうするかもしれないしね……。

(原題:Turist)

京橋テアトル試写室にて
配給・宣伝:マジックアワー
2014年|1時間58分|スウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェー|カラー|1:2.35|5.1ch
公式HP: http://www.magichour.co.jp/turist/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3630276/

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