リアル鬼ごっこ

7月11日(土)公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

女子高生が数十名、バスごと真っ二つ!

リアル鬼ごっこ

 修学旅行の女子高生で満席のバスが、森の中の一本道を走っている。旅行特有のワクワクと高揚した気分に、バスの中は生徒たちの笑い声が絶えない。ひとりの少女がバスの床にペンを落とし、それを拾い上げようとしゃがみ込んだとき「それ」は起きた。目に見えない巨大な力が、バスを上下真っ二つに切断したのだ。バスの車体は上半分が吹き飛び、座席に座っていた女子高生たちの体も切断されて血しぶきが飛び散る。生き残ったのは、ペンを拾おうとしていた少女だけだった。道路には死骸が散乱し、目も当てられない惨状だ。少女は車外に脱出して助けを呼ぼうとするが、そこにも「それ」は襲いかかってくる。助けを求めたハイカーも真っ二つになり、自転車で通りかかった人たちも切断された血まみれの残骸となって道路に転がる。少女は悲鳴を上げながら死体だらけの森を抜け、平凡な朝の通学風景に出くわす。彼女はそこで「ミツコ!」と呼びかけられるのだが……。

 山田悠介の同名小説とその続編は、2008年から2012年の間に5回も映画化され、2013年にはテレビドラマ版も作られている。それなのになぜ今さら『リアル鬼ごっこ』なのか? じつは今回園子温監督が作った新しい『リアル鬼ごっこ』は、原作小説や過去の映画とまったく異なるオリジナルの別作品になっている。それもそのはず、園監督は『リアル鬼ごっこ』というタイトルだけ借りて、ストーリーなどは過去にボツになった自分の企画アイデアを流用したらしい。この映画が『リアル鬼ごっこ』なのは、主人公が何かから逃げ、捕まったら死んでしまうという部分だけなのではないだろうか。今回の映画にも原作と同じ『リアル鬼ごっこ』の世界観を入れることは可能だったはずだが、園子温監督はそんな配慮はせずに我が道を往く。だからこの映画に「またか」と思う必要はない。園監督らしい凄惨な流血描写がたっぷり散りばめられた、独立したひとつの作品だ。

 この映画が面白いかというと、正直どうなのかという部分もある。大型の観光バスが2台続けて真っ二つになり、乗っていた女子高生が主人公ひとりを除いて全員切断されて即死するという描写にはびっくりするわけだが、これにリアリティがあるかと問われれば、当然そんなものはないわけだ。園監督の映画で女子高生の大量死と言えば『自殺サークル』(2002)もショッキングだったが、あのショックは「こういうことは状況としてあり得る」と思えばこその衝撃だった。でも今回の映画のショック描写は、最初から超自然的で生々しさがまったく感じられない。そもそもこの映画を観ていて、登場人物の誰かに感情移入できる観客はいるのだろうか? 若い女優をしごき抜く園監督の演出は、今回特にトリンドル玲奈を激しく追い込んで行くのだが、そこで生まれるエモーショナルな感情表現が、映画を観ているこちらの心と共鳴しないのが残念。なんだか不思議な映画だな。

アスミック・エース試写室にて
配給:松竹、アスミックエース
2015年|1時間25分|日本|カラー|ヴィスタ|5.1chサラウンド
公式HP: http://realonigokko.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4439120/

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