お盆の弟

7月25日(土)公開予定 新宿K’s cinema

上州名物・焼きまんじゅうが食べたくなる

お盆の弟

 渡邉タカシ。仕事は映画監督。といっても5年前に作品を1本撮ったきりで、その後はこれといった作品も仕事もない。今は東京に妻子を残して、群馬の実家で一人暮らしをしている兄と暮らしている。大腸ガンの治療を終えて退院した兄マサルの身の回りの世話という名目だが、妻がそれを別居の口実にしていることは明らかだ。東京に戻らなければならない。そのためには映画の仕事をしなければならない。しかし高校時代からの親友・藤村と作った企画に、プロデューサーは色よい返事をくれなかった。その藤村から強引に飲み会に誘われたタカシは、そこで藤村の恋人の友人だという涼子を紹介される。もともと別の友人を誘うつもりがドタキャンされ、タカシは員数合わせに駆り出されたのだ。藤村は相手にタカシのことをバツイチの独身だと説明しているらしい。タカシは涼子を一目見て、いまだ独身の兄にお似合いの人だと思う。だが彼女はタカシに好意を持つのだった。

 2006年に『キャッチボール屋』でデビューした群馬県出身の大崎章監督が、生まれ育った群馬を舞台に作り上げた新作映画。プロットの元のアイデアは、自分の実際の体験がもとになっているという。映画の主人公は「5年間映画を撮っていない」という設定だが、大崎監督は前作から9年ぶりの作品なのだから、日本で映画監督をやるというのは大変なのだなぁ。脚本は『百円の恋』(2014)の足立紳。地方ロケ作品でもキャストがみんな東京から出張して撮っているような作品が多いのだが、この映画は監督の他にも、主演の渋川清彦と、主人公の親友を演じた岡田浩暉が群馬出身。映画に出てくる群馬は「どこかの地方都市」ではなく、是が非でも群馬でなければならないというこだわりが感じられる。ロケ地を探したら群馬がありましたという映画ではなく、最初からまず群馬ありきの作品なのだ。主人公たちが群馬弁で怒鳴り合う場面は、どれも印象深い名シーンだ。

 兄弟・夫婦・幼なじみ・友人たちなど、ごく小さな人間関係を描いた小さな映画だが、登場する各人物の掘り下げが見事で、エピソードの組み立ても巧みだ。間口は狭くても、奥行きがたっぷりある豊かな映画だと思う。だがこの映画を、モノクロで撮影する意味があったのだろうか。モノクロ映像に「映画らしさ」を感じる人は多いだろうし、映画のプレス資料では監督や関係者が「カラーだったら生々しくなりすぎた」とか「フィクション性やファンタジー性が増した」と肯定的な意見を述べているのだが、僕はこうした意見に肯けない。この映画のモノクロ映像は白っぽくて奥行きや立体感がなく、薄っぺらにしか見えない。特に食事シーンなどは、食卓の上の料理が全部まずそうなのだ。モノクロ映画には専用の色設計が必要で、料理などはモノクロ映像に映えるセッティングが必要なのに、この映画ではただ漫然と目の前の対象をモノクロにしてしまったようだ。残念だなぁ。

映画美学校試写室にて
配給・宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
2015年|1時間47分|日本|カラー|デジタル
公式HP: http://obonbrothers.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4600370/

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