ナイトクローラー

8月22日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ

衝撃のニュース映像はこうして作られる

ナイトクローラー

 人一倍の野心と行動力はあるが、何のコネも実績もない一文無しの男ルイス・ブルーム。彼は偶然出くわした交通事故の現場で、ハゲタカのように群がりあっという間に去って行く奇妙な男たちを見つける。彼らはナイトクローラー。警察や消防の無線を傍受して事件や事故の現場に駆けつけ、ニュース素材となる「衝撃映像」を撮影してテレビ局に売りつけるフリーの報道カメラマンたちだ。この仕事なら何のコネも実績もいらない。ルイスは安物のビデオカメラを手に入れると、見よう見まねでナイトクローラーの世界に足を踏み入れる。持ち前の無神経さでカージャック事件の現場を撮影したのが、彼にとって初の仕事。血まみれの被害者の姿は、テレビ局でも大ウケだった。彼は若いアシスタントを薄給で雇い入れ、より効率的に、より刺激的な事件や事故の素材を量産するようになる。だが視聴者ウケするきわどい映像を撮るため、ルイスの取材もきわどいものになっていく。

 ジェイク・ギレンホール主演の社会派サスペンス。視聴率至上主義で刺激的な映像素材を求めるテレビ局と、そんな彼ら(とその向こう側にいる視聴者)の要求に従って刺激的な映像素材を作り上げるフリーカメラマンたちの姿を描いている。監督・脚本は本作が初監督作となるダン・ギルロイ。彼は『ボーン・レガシー』(2012)のトニー・ギルロイ監督の弟であり、双子の兄が本作の編集も手がけたジョン・ギルロイ、父はトニー賞受賞の戯曲家で、妻は本作にニュース番組のディレクター役で出演しているレネ・ルッソという芸能一家なのだ。あまり大きな予算を使った映画ではなさそうだが、主人公のライバル役でビル・パクストンが出演するなど、キャスティングについてはかなり豪華。登場人物がそれぞれの本音をぶつけ合う台詞のやり取りは舞台劇のような緊張感だが、同時にカーチェイスあり銃撃戦ありのアクション映画でもある。小粒でもかなりの充実感なのだ。

 新聞や雑誌と異なり、テレビは「映像としての刺激や面白さ」がニュースの価値を決める媒体だ。これはアメリカだけではなく、日本でも同じことが言える。全国ニュースを見ている視聴者にとって、自分たちの暮らしを変えるかもしれないのは政治や社会問題だ。だがテレビニュースはしばしば、殺人事件や交通事故や火事をトップニュースにする。そのほうが「絵として見栄えがする」からだ。そうした「絵としての見栄え」を追求すれば、そこに演出やヤラセの問題が出てくる。この映画の中でも、主人公が「よりよい絵」を求めて事故現場に手を加えるシーンが出てくるが、彼はこの瞬間に「報道カメラマン」としての一線を踏み越えてしまった。彼はニュースを待ち構えるのではなく、ニュースになるような事件を仕込むようになる。似たようなことは日本のテレビでも日常的に行われているのではないだろうか……、と思わせるようなエピソードの数々にぞっとさせられる。

(原題:Nightcrawler)

ギャガ試写室にて
配給:ギャガ
2014年|1時間58分|アメリカ|カラー|シネスコ|5.1ch
公式HP: http://nightcrawler.gaga.ne.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2872718/

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