ひとりひとりの戦場 最後の零戦パイロット

8月15日(土)公開予定 ユーロスペースほか全国順次公開

まるで実話版『永遠の0』だ!

ひとりひとりの戦場 最後の零戦パイロット

 今年99歳になる原田要は、元日本海軍のパイロットだ。日中戦争開始直後の昭和12年からパイロットとして戦場の空を飛び、昭和15年に零式艦上戦闘機(通称:零戦、ゼロ戦)が実戦配備されるとこれに乗り込んで華々しい戦果を上げた。昭和16年の真珠湾攻撃では空母蒼龍に乗り込んでハワイに出撃したが、攻撃隊には加わらず、敵の反撃に備えて空母で待機。しかし帰還した攻撃隊から「空母はいなかった」という報告を聞いて、暗澹たる気持ちになったという。翌年6月のミッドウェー海戦は、開始前から日本中が「次はミッドウェーで決戦だ」と浮かれ立っており、「こんなことでは情報が敵にも筒抜けだろうに」と思ったという。ミッドウェーでは攻撃隊に参加したが、帰還すべき母艦を沈められて着水漂流しているところを救助されて九死に一生を得る。やがてガダルカナル島奪還作戦に参加するがそこで重傷を負い、内地に引き上げ指導教官として終戦を迎えた。

 映画のサブタイトルに『最後の零戦パイロット』とあるが、メインタイトルの『ひとりひとりの戦場』の方がむしろ内容に相応しい。上記あらすじで紹介した元零戦パイロットは、太平洋戦争の開始前から終戦までの出来事について詳細に語ることでこの映画のタイムラインを作るのだが、そこにエピソードとして挿入されるのは、このパイロットとは直接接点のない物語だ。特に大きくクローズアップされているのは、華々しい戦果の裏で命を落とした零戦の若いパイロットと彼を助けた日系人の悲劇だ(ニイハウ島事件)。また日米開戦で敵性国民になってしまった日系人の話や、日本の真珠湾攻撃を爆撃を受けるアメリカ軍側から見ていた元軍人の証言など、ハワイ攻撃を巡るエピソードが多く含まれている。映画の冒頭と結末に伝統的なハワイの民謡が流れるなど、この映画は零戦パイロットのエピソードと同じぐらい、「ハワイ」がひとつの大きなテーマになっているようだ。

 しかしこの映画は太平洋戦争にまつわる雑多なエピソードを集めたため、映画全体の構成としては話があちこちに飛んでまとまりの悪い作品になっている。戦後70年という時代の流れの中で、今この時に、これらの証言を集めておかなければ永久に消え去ってしまうのは確かだ。この映画があちこちに出かけてさまざまな証言を集め、それを映画という形で保存してくれるのはありがたい。しかしあまりにもゴチャゴチャしすぎなのだ。インタビューの内容には直接の目撃証言もあれば、伝聞情報も、あるいは後知恵で身に着けた知識もある。元パイロットの原田さんに、ニイハウ島事件について語らせているあたりはまさに「後知恵」の最たるものだ。彼がそこで語っている内容は、すべて戦後になってから知ったものとしか思えない。どのエピソードも本来なら関係者のインタビュー証言を追加取材して、それぞれ1本のドキュメンタリーにできそうなものばかりではあるが……。

映画美学校試写室にて
配給:オリオフィルムズ 宣伝:トラヴィス
2015年|1時間57分|日本|カラー|デジタル
公式HP: http://hitorihitori-no-senjo.com/
IMDb: http://www.imdb.com/name/nm6443913/

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