ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏

9月19日(土)公開予定 Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

名門バレエ団の内紛に切り込むドキュメンタリー

ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏

 イギリスのロイヤル・バレエ団、パリ・オペラ座と並び、世界三大バレエ団のひとつに数えられるロシアのボリショイ・バレエ団。国際的にも高い評価を受けるこのバレエ団はここ数年、その伝統や芸術性以上にスキャンダルで有名になってしまった。2013年1月17日、バレエ団の芸術監督であるセルゲイ・フィーリンが帰宅途中暴漢に襲われ、顔に硫酸を浴びせかけられたのだ。ハンサムな人気ダンサーとして有名だったフィーリンの顔や手は焼けただれ、目に入った硫酸によって視力は奪われた。一体誰が、何の目的でこんなことをしたのか? やがて容疑者として身柄を拘束されたのは、バレエ団のソリストであるパーヴェル・ドミトリチェンコだった。バレエ団の花形ダンサーが、なぜ同じバレエ団の芸術監督を襲わなければならなかったのか? バレエ団は襲撃されたフィーリンを支援するグループと、ドミトリチェンコの無実を主張するグループに二分されてしまう。

 「バビロン」とは古代バビロニアの都で、キリスト教文化圏においては「堕落した退廃の都」という意味になる。新約聖書ではローマがバビロンと呼ばれ、20世紀初頭においてはハリウッドがバビロン呼ばわりされたこともある。人々の欲望が渦巻き、人倫に背いた罪にまみれ、陰謀が巡らされる世界だ。この映画は芸術監督襲撃によってスキャンダルまみれになった名門バレエ団を、退廃の都バビロンに例えている。ボリショイ・バレエ団レベルになれば、ソリストではない「その他大勢」のダンサーたちも世界トップクラスの実力の持ち主たちだ。彼らは日々血のにじむようなレッスンとリハーサルを繰り返し、公演ごとに自分に割り当てられる配役に一喜一憂する。バレエ団の他のダンサーは仲間であると同時に、自分が上にのし上がって行くためのライバルでもある。才能や実力があろうとなかろうと、野心とプライドだけは人一倍強いギラギラした個性の持ち主たちなのだ。

 映画はフィーリン襲撃事件の顛末を全体を貫く縦軸として、そこにバレエ団の他のメンバーたちのエピソードを挟み込んでいく構成になっている。スキャンダルまみれで分裂しかけていたバレエ団の立て直すため政府要人の肝煎りで白羽の矢を立てられたのが、モスクワ音楽劇場バレエ団の総裁だったウラジーミル・ウーリン。ところが彼は、芸術監督のフィーリンとは因縁浅からぬ仲だった。フィーリンはボリショイの芸術監督になる前、ウーリンの下でモスクワ音楽劇場の芸術監督を務めていた。ところがボリショイ・バレエから声をかけられると、後ろ足で砂をかけるようにいそいそとモスクワ音楽劇場を去ってしまったのだ。この無礼な振る舞いを、ウーリンは決して忘れていなかった。治療が功を奏してバレエ団に戻ったフィーリンが、ウーリン体制の整ったバレエ団内部で孤立していくのがこの映画後半の見どころ。芸術の世界にも「政治的な戦い」があるのだ。恐いなぁ。

(原題:Bolshoi Babylon)

ショウゲート試写室にて
配給:東北新社 宣伝:セテラ・インターナショナル
2015年|1時間27分|イギリス|カラー
公式HP: http://www.bolshoi-babylon.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3505682/

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中