ロマンス

8月29日(土)公開予定 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷

大島優子がロマンスカーのアテンダントに

ロマンス

 北條鉢子は新宿と箱根の間を往復するロマンスカーのアテンダントだ。ある日彼女は、アパートの郵便受けに思いがけない相手からの手紙を見つける。それは長く連絡を取っていない母からの手紙だった。鉢子が幼い頃に両親は離婚し、その後は男出入りが激しい母を鉢子は嫌悪していた。列車の中で商品ワゴンから小さな菓子を万引きしようとした中年男を見つけたのは、そんな手紙のせいで鉢子の気持ちが少しいらついているときだ。いつもは穏便に済ませる迷惑客のトラブルだが、今日はつい声を荒げてしまう。駅の事務所に連れて行かれた男は商品代金を払って無罪放免。しかもホームで破り捨てた母からの手紙を、この男がわざわざゴミ箱から拾い上げて読んでいるではないか! 憤る鉢子に対して、その男は突然へんなことを言い出す。「キミのお母さんは死のうとしている。その前にこの箱根に来るつもりなんだ!」。男は鉢子の手を取って、駅の外へと駆け出していた。

 監督・脚本は『ふがいない僕は空を見た』(2012)や『四十九日のレシピ』(2013)のタナダユキ。主演は元AKB48の大島優子と大倉孝二。ふとしたきっかけでそれまで面識のなかった中年男と若い女が箱根のあちこちを見て回ることになるという筋立てを中心に据えて、そこに主人公たちの過去がインサートされて行くという構成だ。映画としてはよくあるパターンで、物語には大きな破綻もない。ただしこの旅を通じて、主人公たちがどう変わったのかがよくわからない。鉢子は母親を許せたのか? 中年男の桜庭は、自分の失敗とどう向き合うのか? 映画を観ても、このあたりははっきりしない。おそらく彼らは何も変わらない。箱根での旅はつかの間の日常からの逃避であって、東京に戻ってしまえばまた元の暮らしがはじまるのだ。たった1日の旅ぐらいで人間は変わらない。それがリアリズムかもしれない。でもそれを変えてみせるのが映画だろうにな……。

 映画のタイトルは『ロマンス』だが、この映画には「ロマンスカー」以外のロマンスがまったく描かれていない。鉢子と桜庭の間に「親しさ」は生まれるが、それは「ロマンス」ではないだろう。結局、いろいろな意味で中途半端な映画なのだ。桜庭をもっと人当たりのいいお調子者にして、コメディ寄りの演出だってできた。鉢子の母子関係と桜庭の父子の関係を共鳴させて、たっぷりと泣かせる方向にしてもよかった。ロマンスカーのアテンダントの仕事をもっと集中的に描いて、一風変わった鉄道映画にすることだってできた。箱根の観光地をたっぷりと紹介して、観光映画だと割り切ることだってできた。でもこの映画はそのどれにも当てはまらず、主人公たちの行動をだらだらと追いかけていくばかり。物語にメリハリがなくてテンポが悪いので、「カーナビが使えなければスマホの地図アプリを使えばいいのに」などと、些末で不要な突っ込みも入れたくなってしまうのだ。

東映第1試写室にて
配給:東京テアトル パブリシティ:太秦
2015年|1時間37分|製作国|カラー|ビスタ|デジタル
公式HP: http://movie-romance.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4396080/

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