東京PRウーマン

8月22日(土)公開予定 シネ・リーブル池袋、品川プリンスシネマ、テアトル梅田

新人PRウーマンの奮闘記

東京PRウーマン

 銀行勤めの三崎玲奈は、合コンで知り合ったアパレル会社社長の武藤に一目惚れ。だが彼が「銀行にいい印象がない」と言ったことから、とっさに「PR会社に勤めています」と嘘をついてしまう。玲奈はそのまま銀行を辞めて、実際にPR会社に転職。PRの仕事についてなにも知らない玲奈は、ベテラン社員草壁の下について見習い修行をすることになったが、入社早々ヒット企画を連発して業界内の注目をあびることになった。そんな彼女の人気と運にあやかって、仕事を発注しようという企業も現れる。玲奈の人生は順風満帆に見えたのだが、人は調子に乗っている時ほど大失敗するものだ。自分が担当することになった化粧品メーカーの新商品発表会で、玲奈はゲストの人気タレントを怒らせてしまった。発表会の目玉として招待したタレントが土壇場で会場から去ってしまうという非常事態を前に、玲奈はなすすべもなくただオロオロすることしかできなかったのだが……。

 モデル出身の山本美月が新人PRウーマンに扮し、仕事を通じて一人前に成長して行く姿を描いたドラマ。恋愛ネタも出てくるのだが、むしろこれは青春ドラマ(何者でもない人間が何者かになろうともがく物語)というカテゴリーになるのだと思う。映画に登場するPR会社ベクトルは赤坂にオフィスを構える実在の総合PR会社で、撮影も同社のオフィス内で行われている様子。映画を観ればPRという仕事のおおよその内容が理解できるようになっているのだが、どんな仕事の中にも必ず存在する泥臭くて地味な作業は物語から極力排除して、PRビジネスの派手な部分ばかりを持ち上げているようにも思う。これは実在のPR会社が製作に協力している以上、止むを得ない部分でもあるのだろう。しかしまったく素人の主人公が転職直後から打率10割で、しかもそれがすべてホームラン級の大ヒットというのはあまりにもリアリティがない。いくら何でも、そりゃないだろう。

 映画は主人公の面接シーンからはじまり、そこで彼女の過去や、PR業界に転職しようとした動機などを語らせる。情報を回想形式で紹介するのは定番の処理だが、エピソードの組み立てやテンポが悪くてここだけでずいぶん長く感じてしまった。主人公が入社早々ヒットを連発するのは映画的なウソとしてギリギリで許容すべきだと思うが、先輩の草壁が「仕事をやり通すための覚悟」を見せる場面がエピソードのクライマックスとして機能していないのは大きな欠点だ。玲奈はこの姿を目の当たりにしたことで自分の甘さや弱さを思い知らされ、その後に彼女自身が草壁の「覚悟の姿」をなぞることで、たくましく成長したことが象徴的に示されるという組み立てになっているはずなのだが……。この最終エピソードでは、PR活動のギャラがどこから発生しているのかわからないという致命的な欠陥も抱え込んでいる。これは脚本できちんと穴をふさぐ処理しておくべきだと思う。

京橋テアトル試写室にて
配給:BS-TBS 配給協力:アークフィルムズ 宣伝:フリーマン・オフィス
2015年|1時間23分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://www.bs-tbs.co.jp/tokyoprwoman/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4569934/

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