螺旋銀河

9月26日(土)公開予定 ユーロスペース(レイトショー)

わたしは、あなたに、なりたい!

螺旋銀河

 会社勤めをしながらシナリオ教室に通っている澤井綾は、自作のシナリオがラジオドラマとして放送されることが決まった。だが講師は「このままでは放送できない。教室の誰かと組んで書き直せ」と容赦ないダメ出し。自作を他人にいじられたくない綾は、「友人のマンガ家に手伝ってもらいます」とその場しのぎのウソをついた。友人をでっち上げて自分で書き直すつもりだが、講師との打ち合わせにはその友人を連れて行かなければならない。綾は同じ会社にいる目立たない事務員・深田幸子に声をかけ、シナリオの共作者として打ち合わせに出てもらうことにする。だが綾にあこがれの気持ちを抱いている幸子はこの話にやたらと張り切り、綾の思惑を越えてシナリオの内容にもあれこれ「建設的な提案」をするようになる。自分から声をかけておきながら、綾が幸子を疎ましく思うようになるのは当然だった。しかも幸子は、綾の大学時代の恋人と仲の良いいとこ同士だった。

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で監督賞とSKIPシティアワードを受賞し、第14回ニッポン・コネクションでも審査員賞を受賞した、草野なつか監督のデビュー作。主演は石坂友里と澁谷麻美。物語の中では「綾=飛びきりの美人だが自己中心的な性格に難あり」で「幸子=地味すぎて存在感が希薄」ということなのだろうが、綾があまり美人に撮れていないのは残念だった。低予算映画で照明は自然光主体、撮影はデジタルカメラという制約があってのことだが、顔の吹き出物のあとまでが直接カメラに写り込んでしまうのは演じている人にも気の毒だ。石坂友里が目をぎらつかせながら性格のきつい綾として尊大に振る舞うと、独特の風邪をひいたような声も含めてどこが魅力的なのかがさっぱりわからない。この映画を観て、主人公の綾を「美人だ!」と思う人がいるのだろうか? 低予算映画の悲哀と言えばそれまでだが、これは結構映画の根幹に関わることだと思う。

 主人公たちが書いているシナリオにある三角関係が、主人公たちを含む実際の三角関係と重なり合うという構成は面白い。主人公たちが課題として与えられた「10分間のラジオドラマ」を、映画の終盤で実際に「10分間のラジオドラマの収録風景」としてノーカットで見せてしまうのも、やはり脚本の構成として面白いと思った。ラジオドラマを作る映画としては三谷幸喜の『ラヂオの時間』(1997)があるが、ある面ではこの『螺旋銀河』の方がドラマの密度が濃くてスリリングなのだ。もっともこれはラジオドラマというより朗読劇に近いと思うし、実際の放送用ドラマなら効果音などをふんだんに使うことになると思うのだが、映画ではそれを「台詞」で処理することで、主人公ふたりきりの濃密に張り詰めた関係を強調しているのだろう。この関係にまで主人公たちを追い込んで行った、脚本と演出の腕前は大したもの。これだけで数々の欠点を補って余りあると思う。

映画美学校試写室にて
配給:リトルモア、ヨアケ
2014年|1時間13分|日本|カラー|16:9|ステレオ
公式HP: http://littlemore.co.jp/rasenginga/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3582110/

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