3泊4日、5時の鐘

9月19日(土)公開予定 新宿K’s cinema

茅ヶ崎の老舗旅館を舞台にした群像劇

3泊4日、5時の鐘

 映画監督の小津安二郎も定宿にしていたという湘南の老舗旅館・茅ヶ崎館に、夏のゼミ合宿のため東京から大学生の一団がやって来る。彼らは考古学科の学生たちで、この夏は近くにある遺跡の発掘作業を手伝うのだ。旅館で彼らを迎えたのは、同じゼミの学生で、今は旅館でアルバイト中の知春。それと入れ替わりにやって来たのは、旅館の長女・理沙の元同僚だった花梨と真紀だ。彼女たちは理沙の結婚披露パーティに出席するため、数日この宿に滞在することになっている。知春は奔放に振る舞う花梨にドギマギし、彼女もそんな知春を面白がって気のあるそぶりを見せる。真紀はそんな花梨の振る舞いが不愉快で怒りをぶつけるが、相手はまるで聞く耳を持たずにのらりくらり。花梨にとって、世界はいつだって自分中心に回っているのだ。ところが宿に合宿している考古学ゼミの教授が大学時代の真紀の恩師でもあることがわかると、真紀はここぞとばかりに張り切り出した……。

 ひとつの旅館に集まった友人、親戚、顔見知り、あるいは初対面の人たちが、恋のさや当てを繰り返すという群像劇。登場人物たちのちょっとしたしぐさ、表情、言葉の間合いなどで、誰が誰に好意を持っているのかなど、相互の人間関係が手に取るようにわかるスリリングな展開。あれやこれやで物語の最後には何組かのカップルが成立するのかと思いきや、そうそう一筋縄では行かないのが面白い。実際の恋愛はともかく、恋愛映画なんてものは「気持ちのすれ違い」にこそ観ている側の醍醐味があるわけで、この映画はそうした恋愛映画の楽しい部分だけを、きれいに切り取って映画のあちこちに配分する。恋愛エピソードに限らず、この映画に描かれる心理的な駆け引きや主導権の握り合いは、まるでスポーツの試合を見ているようでもある。例えば花梨と真紀のパワーゲームは映画前半の大きな焦点。自由奔放に振る舞う花梨が真紀に屈服させられるくだりは観ていて痛快だ!

 特定の主人公を置かない群像劇や音楽に古いジャズを使う演出は、ウディ・アレンを意識しているような気もする。ただし映画の持ち味は、アレンの映画とはまるで違う。アレン作品にある自虐的で時には意地悪にさえ思える諧謔的なユーモアが、この映画には存在しないのだ。皮肉のスパイスはたっぷりまぶしてあるが、そのすべてに登場人物を暖かく包み込むような優しさがある。ウディ・アレンなら、もっと対象を冷たく突き放してしまうだろう。それが良いか悪いかではなく、そうした違いこそが脚本や監督の持ち味であり個性なのだ。これがデビュー作となる三澤拓哉監督は本作の脚本も書いているが、今後も同じように対象を暖かい目で見つめてほしいと思う。

 出演者たちは見慣れない顔も多いが、その場の日常会話をそのまま切り取ってきたような生々しい台詞の掛け合いは見事だ。作り物に見えないこうした場面があればこそ、ここ一番の劇的なシーンも生きてくる。

TCC試写室にて
配給:和エンタテインメント、オムロ
2014年|1時間29分|日本、タイ|カラー|ビスタ|ステレオ
公式HP: https://www.facebook.com/3days.4nights.5ring
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3882446/

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