さよなら歌舞伎町

2015年1月24日(土)公開 全国ロードショー

ラブホテルに引き寄せられる男たち女たち

さよなら歌舞伎町

 徹は同棲している恋人沙那に、ひとつの嘘をついている。都内の一流ホテルに勤めていると言っているが、実際に勤めているのは歌舞伎町のラブホテルなのだ。「いつかは一流ホテルで働く」という夢を、今でも徹は捨てきれていない。だからラブホで店長を任されていても、仕事に対して本気になれないでいる。そんなラブホテルに出入りするのは、いろいろな事情を抱えた男と女ばかり。従業員の鈴木さんは、近所の目を気にしながらワケアリの中年男と一緒に暮らしている。営業で頻繁にホテルを利用している韓国人デリヘル嬢のイリアは、恋人のチョンスに自分の本当の仕事を話さないまま韓国に帰ろうとしている。その日、徹の出勤は午前中からだった。客の少ない昼間のラブホには、AVの撮影予約が入っている。だが撮影隊に届いたピザを控えの部屋に届けた徹は、そこで思いがけない人に再会した。専門学校に行っているはずの妹が、AV女優のバイトをしていたのだ!

 さまざまな登場人物たちのエピソードを限定された時間と場所の中に押し込むグランドホテル形式の映画だが、場所はグランドホテルではなく歌舞伎町のラブホテル。そのためエピソードはセックスがらみのものが多くなるのだが、それが男と女のあけすけな関係を端的に描き出すことにつながっている。物語は徹と沙那の若いカップル、鈴木さんと池沢の中年カップル、ヘナとチョンスの韓国人カップルという3組の男女を縦軸にして、そこに他のカップルも含むさまざまなエピソードをからめた構成。導入部で3組のカップルの朝の日常風景を描き、徹の出勤と同時にカメラはラブホテルに入り、映画の最後にまたカメラは外に出て行って、登場人物たちのその後の姿を写し取る。ただし中間部ではカメラがラブホの中から一歩も外に出ないというわけではなく、比較的自由自在に外に出て行く。スタイルや形式にこだわらずに、物語の流れやわかりやすさを重視しているのだろう。

 日本一の盛り場である歌舞伎町界隈には山ほどラブホがあるだろうに、よりにもよってこのホテルにいろんな関係者が一堂に集まってしまうというのは映画なればこその偶然。しかしそうしたご都合主義が、この映画の場合はそれほど気にならない。それはこの映画が、映画で描かれていない登場人物たちの「それ以前の姿」をさまざまな形できちんと提示しているからだと思う。徹と沙那の関係はギクシャクしていて破綻寸前の気配がする。鈴木さんと池沢の逃亡生活も、このまますんなり終わりになるとは思えない。ヘナとチョンスの関係も同じことだ。隠されていたもので、明らかにされぬものはない。序盤で主要頂上人物たちが置かれた不安定な状況をしっかり描写しているからこそ、それがガラガラと崩壊して行くクライマックスが成り立つのだ。しかし僕自身は主役となる3組のカップルより、家出少女とチンピラの話や、同僚と不倫している女性刑事の話が面白かったな。

早稲田松竹にて
配給:東京テアトル
2014年|2時間15分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://www.sayonara-kabukicho.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3876372/

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