百円の恋

2014年11月15日(土)公開 MOVIX周南ほか山口県内先行ロードショー
2014年12月20日(土)公開 テアトル新宿ほか全国順次公開

ヒロインは30代の引きこもりニート

百円の恋

 斎藤一子は32歳の引きこもりニートだ。実家の弁当屋を手伝うこともなく、ただ時間を潰している。出戻りの姉と大げんかしたことから、一子はついに家を飛び出した。近くのボロアパートに部屋を借り、行きつけの百円コンビニでパートの仕事も見つけた。コンビニには、近所のジムのボクサー狩野がやってくる。ある日彼から試合のチケットを押し付けられた一子は、試合を見に行くことになった。狩野はあっけなく負けてそのまま引退。だが死力を尽くして戦うその姿に、一子はひどく感動してしまうのだ。一子は自分でもボクシングを始めることにする。コンビニで倒れた狩野を自分の部屋に運んで看病し、そのまま同棲のような関係になるふたり。だが狩野は豆腐屋のアルバイトで同僚の女と仲良くなって部屋を出てしまい、一子はますますボクシングにのめり込んで行く。女子ボクシングの定年は32。一子はテストを受けてプロのリングに上がりたいと願うのだが……。

 『童貞放浪記』(2009)の足立伸が書いたオリジナル脚本を、『イン・ザ・ヒーロー』(2014)の武正晴監督が映画化した作品。主人公一子を演じる安藤サクラは、ニート時代のぶよぶよとだらしなく太った身体から、女子プロボクシングのリングに上がる精悍な肉体へと変身してみせる。彼女は昨年、本作と『0.5ミリ』(2014)の演技で数々の映画賞を受賞することになった。『0.5ミリ』も良かったが、太ったり痩せたりロバート・デ・ニーロばりの肉体改造に挑戦した本作の彼女は素晴らしい。美人というわけではないのだが、彼女は10年後も20年後も日本映画界を支えていく女優だと思う。この映画で狩野を演じた新井浩文も個性的で上手い役者なのだが、この映画では出しゃばることなく脇から安藤サクラをサポートしているように見えた。一子と深い仲になった狩野が、そのままスッと別の女のところに行ってしまうあたりの葛藤のない表情がいい。

 登場するのは一子を筆頭にダメな人間ばかりで、中には「人間のクズ」とでも呼びたくなるようなやつもいる。その中でひたむきにボクシングに取り組みプロのリングに上がる一子の格好良さ。この映画の中では、彼女だけが「わたしは変わる!」と決意して、実際に自分自身を変えるのだ。一子はその変化を「勝利」で確信したかったと思うのだが、なかなかそうは問屋が卸さない。「勝ちたかった!」って、そりゃそうだ。しかし勝てなかったとしても、彼女は確実に変わったし、彼女のその後の人生はこれまでと大きく違ったものになるだろう。ひょっとすると、これは『ロッキー』(1976)に対するオマージュかもしれない。ボクサーとしての練習風景で観客を熱くさせるのも同じだし、最後が勝利で終わらないのも同じだ。ロッキーも一子も、自分を変えようと願いながら変われない弱い者たち、勝とうと思って努力してもやっぱり勝てない普通の人たちの代弁者なのだ。

早稲田松竹にて
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
2014年|1時間53分|日本|カラー|ビスタサイズ|DCP5.1ch
公式HP: http://100yen-koi.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4080598/

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