薩チャン正ちゃん 〜戦後民主的独立プロ奮闘記〜

8月29日(土)公開予定 K’s cinemaほか全国順次公開

独立プロから見た戦後日本映画史

薩チャン正ちゃん 戦後民主的独立プロ奮闘記

 戦後日本映画界は、東宝争議(1946〜48)とレッドパージ(1950)で大量の労働者を解雇追放した。そのまま映画界を去った者も多かったが、一部の映画人は自分たちで製作会社を作って新しい時代の映画作りに乗り出す。山本薩夫や今井正も東宝を離れ、既存の映画会社での仕事に行き詰まりを感じた新藤兼人は松竹を退社した。こうして1950年代から、独立プロの企画製作による新しいタイプの映画が次々に誕生することとなる。当時の日本はまだ米軍の統治下で、大手映画会社は占領軍の意向を伺いながら映画を作っていた。だが独立プロでは当時の時代の空気を敏感に汲み取りながら、大手では通りにくい企画を次々に映画化して映画ファンの支持を得ることになる。だが独立プロはどこも資金繰りが苦しく、スタッフも出演者も無償労働になることがしばしばだ。現場を支えていたのは、「少しでも良い映画が作りたい」という映画人としての情熱だけだった。

 1950年代から60年代初頭にかけて誕生した、独立プロとその作品についてのドキュメンタリー映画だ。日本映画の戦後史を大手映画会社ではなく、大手を離れて独立した映画人たちの視点から描いている。扱われている時代は1945年の終戦から、一応は現代まで視野に入っている。現在大手映画会社はほとんど自前では映画を作らず、映画作りの主体は独立系の映画製作プロダクションになっているからだ。この映画に登場する独立プロは、現代につながる日本映画史のひとつの流れを作り出してきた勢力だとも言えるだろう。だがそのあたりは、この映画では少し曖昧にぼかしてある。大手の映画会社から排除され、製作だけではなく配給さえも自分たちで行わざるを得なかった戦後の独立プロと、大手映画会社から製作を委託されるプロダクションとでは、同じ独立プロでも立ち位置がまるで違うのだ。本作の内容が1960年代以降、歯切れが悪くなるのはそのせいだ。

 この映画で取り上げているのは東宝争議やレッドパージに端を発して生まれた独立プロだが、1950年代の終わりから60年代には別の理由で独立プロが乱立する時代がやって来る。映画製作費の高騰やテレビの台頭に対応して、映画会社が自社製作を減らして外注を増やして行くのだ。大物監督やスター俳優たちが次々に古巣の映画会社を離れ、自分たちのプロダクションを立ち上げた。映画監督なら黒澤プロが1958年、木下プロが1954年設立。スター俳優なら、三船プロは1962年、石原プロが1963年、勝プロ1967年、中村プロ1968年……といった具合。現在の映画製作につながっていくのは、むしろこうした形の独立プロなのではないだろうか。この映画で取り上げられた1950年代の独立プロ運動は、1960年代にはこれら後発の独立プロの映画作りに飲み込まれるように消えてしまったのだと思う。(近代映画協会はその例外なんだろうなぁ。)

松竹試写室にて
配給・宣伝:新日本映画社
2015年|1時間34分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: https://www.facebook.com/satchanshouchan
IMDb: http://www.imdb.com/name/nm4006553/

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