日本のいちばん長い日

8月8日(土)公開予定 全国ロードショー

昭和天皇が終わらせた戦争

日本のいちばん長い日

 太平洋戦争末期の1945年4月7日。小磯内閣総辞職を受けて、枢密院議長の鈴木貫太郎が第42代内閣総理大臣に任命された。彼は自分の内閣に与えられた使命は、戦争終結だと知っている。連日のように続く空襲で既に東京は焼け野原になっていた。鈴木首相は組閣に当たって、かつて侍従武官として天皇に使えていた経験を持ち、若手将校たちからも慕われている阿南惟幾を陸軍大臣に任命する。彼の使命は「本土決戦」を叫ぶ陸軍内の強硬派を抑えることだ。7月26日、米英中は日本にポツダム宣言を突きつける。日本がその扱いに苦慮する間に、8月6日に広島への原爆投下、9日にはソ連の参戦と長崎への原爆投下が続いた。8月10日の御前会議において、鈴木首相に請われる形で天皇自らがポツダム宣言受諾の聖断を下す。だがこの動きを察知した陸軍内部では、徹底抗戦を主張する一派がクーデターを計画しはじめた。これは阿南大臣にも知らされるのだが……。

 半藤一利の原作は、1967年(昭和47年)にも岡本喜八監督の手で映画化されている。岡本版の脚本は橋本忍が手掛けているが、昭和天皇が8月14日に2度目の聖断を下してから翌日正午に玉音放送で戦争が終結するまでの丸1日に焦点を当て、その間に起きたさまざまな出来事を東宝オールスターキャストで群像劇として描いた。しかし今回の原田眞人バージョンは、物語を終戦の4ヶ月前からはじめ、物語の中心となる登場人物を数人に絞り込んでいる。このリメイク版の主人公は、阿南惟幾陸相、鈴木貫太郎首相、そして昭和天皇なのだ。昭和天皇をここまで丁寧に描いた映画作品は、日本では初めてのものではないだろうか。映画の後半は若手将校によるクーデター未遂事件(宮城事件)に割かれるが、残念ながらこの部分には岡本版ほどの迫力がない。この事件に映画の主人公である阿南・鈴木・天皇がノータッチだから、どうしても傍流のエピソードになってしまう。

 この映画では岡本版で割愛された主人公たちの私生活を描くことで、彼らの人間的な厚みを生み出している。阿南役の役所広司は原田作品の常連として監督の信頼に応えてきた俳優だが、岡本版の三船敏郎に比べると弱いのは否めない。しかし現在の俳優でこの役を演じられる者が誰かいるかと問われると、これといった顔を思い浮かべることができないのだが。

 岡本版ではすべての出来事を14日から15日の丸1日に集約したため、将校たちの一部が突然反乱を起こしたような描き方になっていた。しかし今回の映画を観ると、陸軍内部でもっと早い段階から和平派粛正のクーデター計画が練られていたらしい。8月14日の宮城事件は、その燃えかすのようなものに過ぎないのだ。8月15日の終戦が覆されるとしたら、その本当の危機は宮城事件ではなく、それ以前にあった。阿南陸相はそれを封じ込めることに成功し、最後は自ら割腹することで最後の火消しを行ったのだ。

楽天地シネマズ錦糸町(シネマ1)にて
配給:アスミック・エース、松竹
2015年|2時間16分|日本|カラー|シネマスコープ
公式HP: http://nihon-ichi.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4289340/

日本のいちばん長い日」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 『日本のいちばん長い日』を観てきた | 新佃島・映画ジャーナル

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