木屋町DARUMA

10月3日(土)公開予定 渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー

そのやくざには両腕と両脚がなかった

木屋町DARUMA

 勝浦は中年のやくざだ。だが人が彼を見てギョッとし目を背けるのは、彼がやくざだからではない。彼は5年前に組織間の対立抗争で両手足を失った、異形のやくざ者なのだ。現在のしのぎは債権の取り立て。つききりで身の回りの世話をしている坂本が彼を債権者の家に放り込むと、勝浦はそこで大声を張り上げ、食事や身の回りの世話を要求し、若い娘にのしかかり、果ては大小便を垂れ流す。相手はあっという間に音を上げて、こちらの言う要求をすべて飲むという段取りだ。坂本は勝浦の世話が嫌で嫌で仕方がない。もともと好き好んで足を突っ込んだやくざ稼業ではないが、親分である古澤組長の人柄に惚れ込み、組長から「勝浦の手足になるんじゃない。俺の手足のかわりになって勝浦を世話してやってくれ」と頼まれればこの仕事も嫌とは言えない。だがある仕事をきっかけにして、彼は5年前に勝浦が四肢を失うことになった事件の真相に気づいてしまうのだった……。

 勝浦を演じるのは遠藤憲一。今回は両手両脚がないやくざという異様な役で、手足がないから通常のアクションシーンは皆無。だが通常のアクションができない部分を、吠えるように叫ぶ台詞や、クローズアップの多い表情で演じきり、勝浦というキャラクターを生々しいリアルなものにしている。物語はこの勝浦と、彼の身の回りをする後輩のやくざ坂本の関係を軸にして進行していく。遠藤憲一の手足はCGで消しているようだが、これは『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)でゲイリー・シニーズの脚を消したのと同じ理屈。当時は途方もない大金がかかった最新の技術だったが、20年かけてそれが日本のインディーズ映画でも使えるようになったわけだ。しかし手足を後処理で消してしまうにしろ、手足がないという想定で演技を強いられた遠藤憲一はかなり大変だったはず。だが一番すごいのはこの映画を企画して完成させ、上映を実現させた人たちかもしれない。

 障害者というのは日本ではアンタッチャブルな存在だ。それを良く描こうが悪く描こうが、あちこちから「差別だ」という批判が出てくる。東京では街に出れば車椅子の人も白杖の人も盲導犬も普通に見かけるのに、映画やドラマの中にそうした人たちが出てくることは滅多にない。日本で容認されている障害者像は結局のところ、品行方正で生涯にも負けず一生懸命生きている、道徳教材になりそうな人たちばかりなのだ。そんなものは「24時間テレビ」でしか通用しないだろう。本作はそうした手垢の付いた障害者像に、真っ向から歯向かっていく。主人公の勝浦は決して道徳教材になりようがない男だ。何しろ彼は反社会勢力であるやくざなのだから。障害を持つやくざというキャラクターは、この映画がはじめてではない。誰もが知るものなら、例えば『座頭市』シリーズがある。だがこの映画に比べれば、座頭市にはまだ道徳教材のにおいがする。勝浦は勝新を超えている。

映画美学校試写室にて
配給・宣伝:アークエンタテインメント
2014年|1時間56分|日本|カラー|HD|5.1ch
公式HP: http://kiyamachi-daruma.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3853332/

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