カプチーノはお熱いうちに

9月19日(土)公開予定 シネスイッチ銀座、川崎チネチッタ

あんなに嫌な男なのに……これは恋?

カプチーノはお熱いうちに

 アドリア海に面した南イタリアの美しい街レッチェ。連日多くの常連客で賑わうカフェ・タランチュラで働くエレナは、同僚で親友でもあるシルヴィアが連れて来た新しい恋人アントニオが気に食わない。整備工だという彼は粗暴な差別主義者。どうして親友にあんな恋人ができたんだか……。だがいつしかエレナは、目の端でアントニオの姿を追いかけるようになっている自分に気づく。ひょっとして彼に恋をしているの? まさか! だって全然自分のタイプじゃないし、自分にはお金持ちでイケメンの恋人だっているのにね。でもやっぱり……。13年後。エレナはアントニオと結婚して2人の子供に恵まれている。タランチュラの同僚だったファビオと一緒にカフェを経営して、店は連日満員の大盛況ぶりだ。やり手のエレナは、そろそろ2件目の店を出すことも考えている。だがそんな矢先、叔母の付き添いで受けたガン検診で、かなり進行中の乳がんが見つかってしまった。

 脚本に仕掛けのある映画が好きなので、この映画は大いに気に入っている。映画は3つのパートで構成されているが、最初はカフェ・タランチュラの周囲で起きる若い男女の三角関係。これが盛り上がってきて観客がハラハラしてきたところで、時間がパッと13年後に飛んで、ヒロインは親友の恋人だった男と結婚している。なぜどういういきさつでこうなってしまったのかはわからない。わからないまま物語はここから、ヒロインの乳がん発見とその後の治療生活を描く難病ものになる。このドラマがどんどん進んで「それでどうなるの!」と観客が身を乗り出したところで、時間がまた一瞬にして13年前に戻ってヒロインが結婚に至るまでのエピソードを語り始める。A→B→Cという時間軸を、A→C→Bとつないでいるわけだが、この切り分け方が絶妙。Cパートに該当する闘病ドラマはかなりシリアスなのだが、最後にBパートがくることで後味が軽やかなものになった。

 登場人物たちは子役を除いて、13年の年月をまたいで同じ俳優が演じている。すごかったのはヒロインの夫アントニオを演じたフランチェスコ・アルカで、精悍な若いハンサムガイから、お腹ぽっこりで少しはげ上がった中年男まで演じてみせる。今どき体重の増減ぐらいではあまり驚くことでもないかもしれないし、ぽっこりお腹だけは特殊メイクかもしれない。でも顔つきがまるで違うのだ。この映画の中で、しっかり13年の月日を肉体で表現し得ていたのは彼だけだと思う。中年太りの残念な姿を見せた後、再び物語が13年前に時間が戻って若いスリムな姿になるので、この変貌ぶりが余計に際立っている。

 主人公のエレナがどうなるかは、映画を観てもわからない。だが思い出深い風景の中で、エレナは夫と深く愛し合っていることを自覚し、夫もまた妻への思いを態度で示す。付き合いの長いカップルや夫婦で観ると、その後いろいろと話が弾みそうな映画だと思う。

(原題:Allacciate le cinture)

京橋テアトル試写室にて
配給・宣伝:ザジフィルムズ 宣伝:中目黒製作所
2014年|1時間52分|イタリア|カラー|シネマスコープ
公式HP: http://www.zaziefilms.com/cappuccino/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3425034/

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