東京の日

10月31日(土)公開予定 ユーロスペースほか全国順次ロードショー

優しいだけの男は不誠実?

東京の日

 下北沢のカフェでアルバイトをしている本田祐介は、大きなトランクに荷物をいっぱいに詰めた若い女アカリと出会う。「行く場所がないならウチに来る?」。彼女は祐介の部屋に転がり込むが、「わたし妊娠してるから」と宣言して男女関係になることは拒絶。祐介は男女関係については、来る者拒まず去る者追わずの淡泊な性分だ。ここで彼女に何かを無理強いするつもりはない。「まあ行くところがないならいればいいさ」。こうして祐介とアカリの奇妙な同棲生活(?)がスタートした。彼女は近くのスナックで仕事を見つけ、祐介も仕事の帰りにちょくちょく店に立ち寄るようになる。自分は彼女のことが好きなのか? じつは祐介にも、自分の気持ちがよくわからない。スナックのママは「そういうのをカッコイイと思ってんじゃないの?」と手厳しいが、それを否定できない面がなきにしもあらず……。その数日後、祐介のバイト先のカフェが一時休店することになった。

 主人公の本田祐介を一言でいえば、「ザ・草食男子!」ということになる。温厚で人当たりがいい。常に相手に気をつかって、拒絶の言葉をかけるときもワンクッション置いて当たりを柔らかくする。例えば映画の導入部だ。カフェに居座るアカリに「(店を出なきゃ)ダメですか?」と問われて、「う〜ん」と一度考えたような顔をしてから、「ダメですね」と答えるあたりにも祐介の性格が表れているではないか。閉店時間なんだから、客は店の外に出なきゃダメに決まっている。でもそのダメを言うのに、一応考えたふりをする。「あなたの言い分を、わたしも少し検討してみましょう」というような顔をしてみせる。でもそれは「ふり」でしかない。祐介はいつもそうなのだ。いつだって何か考えているような顔をしていて、じつはあまり考えていない。強い決意や覚悟があってそうしているのか、何となくそうした生き方を選んでいるのか、映画を観ていてもよくわからない。

 祐介がつかみ所のない男だとすれば、もうひとりの主人公であるアカリは明確な輪郭を持つ人物だ。彼女がなぜさほどの金も持たぬまま、手荷物ひとつで知り合いも誰もいない東京にやって来たのか? その理由は映画の中できちんと明かされているし、彼女の感情の動きや、その時々にどんなことを考えているのかも、映画を観ている人にはわかりやすいほどによくわかる。「よくわからない男」と「わかりやすい女」を並べることで、そこにどんな化学変化が生じるのか? よくわからない男は、観客にとって少しずつ「わかりやすい男」に変わってくるように思える。それがこの映画の見どころだ。

 物語の結末のつけ方には「これしかない」という説得力があるのだが、映画のラストシーンはカラオケの場面で切ってしまってもいいと思った。そこで終われずにさらに1シーン加えてしまったのは、「かっこよく終わりたくない」という作り手の含羞か、それとも自信のなさか?

ユーロライブにて
配給・宣伝:マジックアワー
2015年|1時間42分|日本|カラー|1:1.85|DCP
公式HP: http://www.tokyonohi.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4982066/

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