アクトレス 女たちの舞台

10月24日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ

女優はいつも自分自身の人生を演じる

アクトレス 女たちの舞台

 国際的な大女優であるマリア・エンダースは、スイスに向かう列車に乗っている。彼女にとって出世作となった舞台劇「マローヤのヘビ」の作者ヴィルヘルム・メルヒオールの代わりに、彼に贈られる賞を受け取ることになっているのだ。だがそこに入ってきたのは、メルヒオールが亡くなったという悲しい知らせだった。授賞式後のパーティで、マリアは新進気鋭の演出家クラウスから再演される「マローヤのヘビ」への出演を打診される。だが演じるのは彼女がかつて演じた若い主人公ではなく、主人公に追いつめられて自殺する中年女性の役だ。マリアはこれに躊躇するが、マネージャーのヴァレンティンが「クラウスの舞台ならぜひ出るべきだ」と強く勧めたこともあって出演を決めた。本番舞台に向けての本読みは、メルヒオールが「マローヤのヘビ」を執筆した山荘を借りて行うことにした。だが何度台本を読んでも、マリアは自分が演じるべき役に共感できないのだった。

 役者というのは多かれ少なかれ、演じる役柄の中に自分自身を投影し、観客もまた役者の過去の経歴を役柄の中から読み取っていく。オリヴィエ・アサイヤス監督と主演のジュリエット・ビノシュは、アンドレ・テシネ監督の『ランデヴー』(1985)に脚本家と出演者として関わり、ふたり揃って映画業界入りしたという間柄。観客がこの関係を劇中のマリアとメルヒオールの関わりに投影せずにいられないことは、映画の作り手たちも十分に意識していることだろう。今回の映画のテーマは「老い」だ。劇中のマリアは40歳という設定だが、演じているビノシュは1964年生まれで50歳。50歳のビノシュに40歳の主人公を演じさせることで、そこに10年分余計な「老い」が否応なしに浮かび上がるという演出だろうか。それにしてもジュリエット・ビノシュはすごい貫禄だ。10年前に40歳だった彼女に、この映画で演じてみせた大女優の貫禄があったかなぁ……。

 優れた映画は優れた暗喩を用いるものだ。この映画に登場するのは、劇中劇として登場する戯曲「マローヤのヘビ」の名の由来にもなっている気象現象。山々に囲まれた渓谷を巨大なヘビがうねるように雲が流れて行くのだが、これは悪天候の前兆現象だと説明されている。晴れ渡って遠くまで景気が見渡せる天気は、ヘビの登場で下り坂に転じる。映画の中ではこの現象が、主人公の人生の節目の比喩として登場する。世界中の人々から称賛され、自信に満ちあふれていた主人公の生活は、ヘビの登場をきっかけに暗転して行く。だがヘビの登場を、主人公は見逃してしまう。気がついたときには、彼女の人生は既に土砂降りの悪天候になっている。

 主人公のマネージャーを演じたクリスティン・スチュワートと、かつて主人公が演じた役を新たに演じることになったクロエ・グレース・モレッツの若さが主人公と対比される。モレッツの悪気のない笑顔が恐い。若いって残酷だな。

(原題:Clouds of Sils Maria)

京橋テアトル試写室にて
配給:トランスフォーマー 宣伝:メゾン
2014年|2時間4分|フランス、スイス、ドイツ|カラー|シネスコ|DCP
公式HP: http://actress-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2452254/

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