流れ星が消えないうちに

11月21日(土)公開予定 角川シネマ新宿、109シネマズ川崎

彼女と彼と、死んだ元彼の三角関係

流れ星が消えないうちに

 大学生の奈緒子が、一人暮らしの家の玄関で寝るようになってもうだいぶになる。それは高校時代からの恋人加地が、旅先で巻き込まれた不慮の事故で亡くなってからのこと。今は新しい恋人もできたが、玄関で眠る習慣は止まらない。そうしないと眠れないのだ。新しい恋人は、加地の親友だった巧。このことで奈緒子と巧は、互いに死んだ加地を裏切っているような気がしている。幼なじみだった奈緒子と加地。高校の文化祭での告白にも、じつは巧が立ち会っていたのだ。しかし今はふたりの間で、加地の話題はタブーのようになってしまっている……。そんな奈緒子のもとに、母や妹と一緒に大分にいたはずの父が突然やって来る。「今回は出張?」とたずねる奈緒子に、「いや、家出したんだ」と答える父。長年連れ添った夫婦にも、いろいろと事情があるらしい。父はそんな事情を知らず家にやって来た巧となぜかすっかり意気投合し、酒を酌み交わす間柄になってしまう。

 橋本紡の同名小説を、『君の好きなうた』(2011)の柴山健次が脚色監督した青春ラブストーリー。主人公の奈緒子を演じるのは、NHKの朝ドラ「あさが来た」でヒロインを演じる波瑠。死んだ恋人加地には、朝ドラ「まれ」で主人公の弟を演じていた葉山奨之。奈緒子の恋人でこの映画のもうひとりの主人公巧を演じるのは入江甚儀、突然上京してくる父には小市慢太郎という配役。途中ワンポイントで石田えりが出演するが、若い俳優ばかりの場面にこういうベテランが出てくると画面がピリッと引き締まる。映画は奈緒子が玄関で寝ている場面と、巧が大学で最後のボクシングの練習をする場面からスタートする。加地はこの時点で既に死んでいる。加地の死や生前の思い出は、奈緒子と巧のそれぞれが語る回想シーンの中で描かれていく。これはその場にはもういない、死んでしまったひとりの男を巡る物語なのだ。彼は不在であるがゆえに、逆にその存在が大きくなる。

 上映時間2時間4分が長過ぎるわけでもない。話としても、まあ悪い話ではないだろう。だが最後まで大きな盛り上がりがないので、「ああ、いい話だったな」という穏やかでヌルい感想以外に出てこないのだ。この映画にかけているのはアクションだ。殴り合いをしろというわけではない。カーチェイスがほしいわけでもない。登場人物の気持ちを、感情の高まりを、台詞ではなく具体的な絵として見せてほしい。満々と水をたたえた感情のダムが、最後に決壊するカタルシスが欲しいのだ。そのためにも全体の構成は大胆に見なおすべきだったかもしれない。互いに愛し合いながらも加地の存在が原因で行き詰まっている奈緒子と巧の関係が、奈緒子の父の出現によって変わっていくというのが全体の大きな見取り図だ。映画からはこの大きな絵が見えてこない。小市慢太郎はトリックスターとして打って付けのキャスティングだったのに、その持ち味が生かされていないのは残念。

CAPSULE(原宿)にて
配給・宣伝:アークエンタテインメント
2015年|2時間4分|日本|カラー|ヴィスタ|5.1ch
公式HP: http://nagareboshi-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4348046/

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