ヴィジット

10月23日(金)公開予定 TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

はじめて訪れた祖父母宅で見た異変

ヴィジット

 15歳のベッカと13歳のタイラーは姉弟だけで1週間、ペンシルバニア州メイソンビルで暮らす祖父母の家で過ごすことになった。若い頃に両親の反対を押し切って家を飛び出し駆け落ちした母は、今でもその時のことがわだかまりになっているため同行しない。それでも姉弟は祖父母とのはじめての対面に大はしゃぎ。姉のベッカはビデオカメラを回して、自分の家族についてのドキュメンタリー撮ろうと張り切っている。祖父母は初対面の孫たちを涙ぐみながら迎え入れ、姉弟は家のあちこちに残る「母の思い出の場所」を見つけて大喜び。携帯の電波がつながりにくいのは玉に瑕だが、田舎の素朴な風景や祖母の手作り料理は格別だった。だがその日の夜、台所で食べ物をつまもうと部屋を抜け出したベッカは、階段の下で展開するおぞましい光景を目撃してしまうのだった。姉弟は翌日から、祖父母の異様な行動や家のあちこちに存在する異変に気づきはじめるのだった……。

 M・ナイト・シャマラン監督の新作は、最近すっかり使い古された感もあるPOV、フェイク・ドキュメンタリー形式のサスペンスホラー映画。同監督の映画が常にそうであるように、この映画にも最後には観客があっと息を呑む結末が待っている。だがこの映画が描き出す恐怖は、こそにあるわけではない。そこに至るまでに、主人公である姉弟がからめ取られていく「正常性バイアス」がこの映画の恐怖を作り出している。正常性バイアスとは、異変に出くわした人間が「これは大したことではない」「心配する必要はない」「大騒ぎするのはみっともない」などと考えて、危険に対して適切な対応を取れなくなってしまうことだ。人間は目の前でおかしなことが起きていても、そこに何らかの合理的な説明が付けばそちらを優先してしまいがちだ。この映画では「年寄りだから」「病気だから」などさまざまな理由をつけて、姉弟は目の前の異変を合理化し正当化してしまうのだ。

 この映画は正常性バイアスによる認知の歪みを、かなりリアルに描いている。例えばこのバイアスは、年齢を経るに従って強固なものになる。土砂崩れや洪水などの天災で、しばしば高齢者が犠牲になるのはなぜか。それは高齢の人ほど「以前は大丈夫だった」という経験があり、「今度も大丈夫だろう」という正常性バイアスが働くからだ。映画の中で最初に異変を深刻に受け止めたのは、13歳の弟タイラーだった。だが15歳のベッカはそれをまともに受け止めない。弟は潔癖症でちょっとおかしい。神経質で深刻に考えすぎなのだ。姉は弟に「何でもない」と説明し、説得し、やがて弟も姉の正常性バイアスに取り込まれてしまう。同じことは、社会のあちこちで日常的に行われている。家庭の中で、学校で、会社の中で。運動会の組体操で十段ピラミッドを作ろうとする学校は、それが危険だという意見や声に耳を傾けない。これもまた、正常性バイアスのなせるわざなのだ。

(原題:The Visit)

東宝東和試写室にて
配給:東宝東和
2015年|1時間34分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタルSRD
公式HP: http://thevisit.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3567288/

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