太陽を撃て

11月7日(土)公開予定 シネマート新宿
11月21日(土)公開予定 シネマート心斎橋

男は愛してはならぬ女を愛した

太陽を撃て

 ジョンとチェンはアメリカに不法滞在中の韓国人だ。ジョンはアメリカに働きに出たまま行方不明になった父の消息を追っていたが、見つけた父はもう墓の中。途方に暮れたふたりは、砂漠に生き埋めにされた男を救い出す。彼は韓国系ギャング組織のボスだ。行くあてのないふたりは、ボスの組織で手下として働き始める。最初は簡単な仕事から、間もなく厄介な仕事へ。やくざ稼業の垢がすっかり身体に染みて、こうなればもう堅気の世界には戻れない。ボスは稼業の隠れ蓑として営むジャズバーの歌手サラにご執心。ジョンもまた彼女に心引かれるが、これは禁じられた危険な恋だった。ある日、サラが大事件を起こす。CDを出すという約束をいつまでも果たしてくれないボスに業を煮やし、彼女は組織の金を持って逃げたのだ。ジョンとチェンはボスの命令でサラと金の行方を追う。見つけて連れ返せば、サラはどうなるだろうか。ジョンにとっては気の重い仕事だった……。

 カン・ジファン主演のチンピラヤクザ映画。オール・アメリカ・ロケという部分でスケール感を大きく見せているが、登場人物は主人公のジョン、弟分のチェン、組織のボス、ジャズ歌手のサラくらいで、物語の大きな広がりは特にない。ジョンが自分の父の墓を確認した後、埋められているボスを助けて彼の子分になるところから、ジョンとボスとの間には疑似親子関係が成立していることがわかる。だとすれば、ボスの女に思いを寄せるという展開はエディプスコンプレックスのバリエーションであり、ジョンがなかなかサラとの距離を詰められないのは去勢コンプレックスだろう。ジョンに常に付いて回るチェンは、自分の感情に対して抑制的なジョンの影法師。彼の内なるもうひとりのキャラクターなのだ。ジョンが父(ボス)との関係にとらわれ身動きできなくなっていくのに対し、チェンはもっとずっと自由に行動する。この映画全体が心理学的な寓話になっているようだ。

 この映画はラスベガスのはずれにあるホテルで語られる、ひとりの老人の思い出話だ。プレスリーの曲と同じ「ハートブレイクホテル」という名前のホテルにやって来た老人は、思い出のスイートルームにチェックインして自分が愛した女との思い出を回想する。物語は老人のエピソードではじまり、老人のエピソードで終わる。だがこの老人は何者なのか? 枠物語の形式になっているこの回想譚は、老人自身の過去の物語だと言えるのか? じつはそれがわからない。すべての物語は、老人自身の妄想が生み出した虚構なのかもしれない。この老人の姿が、本来は回想譚であるはずの物語の中に一瞬まぎれ込んでいるのはもちろん意図的な描写だ。この小さな描写が、この甘美な回想シーン全体の真実性を曖昧にしてしまう。物語全体を支配するこの老人は、文学批評で言うところの「信頼できない語り手」になっている。どれほど残酷なものであれ、この思い出は美しすぎるのだ。

(原題:태양을 쏴라)

京橋テアトル試写室にて
配給・宣伝:ファインフィルムズ
2015年|1時間27分|韓国|カラー|ビスタ|5.1ch
公式HP: http://www.finefilms.co.jp/taiyou/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4535872/

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