家族の映画

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

平凡な家族を次々襲う一冬の体験

Rodinny film

 冬休みを前に両親が一足早く旅行に出かけ、家には高校生のアナと中学生のエリクの姉弟が残された。学校が休みになればふたりも両親に合流する予定だが、それまでは子供たちだけの日々だ。ふたりはそれぞれ友人を家に呼んで、好き放題の楽しい暮らしがはじまる。エリクは姉の親友クリスティーナと男女の仲に。親のいぬ間に、一夏の体験ならぬ一冬の体験だ。だが楽しい時間は長くは続かない。エリクが長く学校をサボり、落第寸前だということがばれてしまう。旅行から戻れない両親は、姉弟の監督役として叔父を家に送り込む。エリクは不満たらたらだが、これも身から出た錆だ。いずれにせよ、休みはもうすぐ。旅行に出発するのも目前……のはずだった。だが姉弟が旅行に出かける数日前になって、以前は毎日欠かさずあった両親からの連絡が途絶えてしまう。先方からの連絡はなく、こちらからの連絡もつかない。姉弟は出発を取りやめて、警察に相談するのだった。

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乱[4Kデジタル復元版]

第28回 東京国際映画祭  日本映画クラシックス

フォルマリスト黒澤明の最高傑作!

乱

 戦国乱世の時代。近隣に並ぶ者なき武将一文字秀虎も齢七十となり、家督を長男太郎に譲って隠居することに決めた。弟の次郎と三郎にも太郎を助け、兄弟3人で一文字家を盛り立ててほしい。自分は大殿として太郎を後見し、今後は悠々自適の余生を送るつもりだ。だが三郎はこれを「弱気になった老人の妄言」と切り捨てる。親の身を思っての意見だったが、秀虎はこれに激怒し三郎を追放してしまった。三郎は隣国の藤巻氏に匿われることになる。だが隠居した秀虎には、思いもかけないことが起きる。一家の頭領となった太郎は妻の楓に言われるがまま、秀虎を粗略に扱うようになったのだ。ブライドを傷つけられた秀虎は次郎のいる二の城に向かうが、次郎もまた体よく父を追い払ってしまう。行き場を失った秀虎は三郎を頼ることも考えたが、やはりプライドが邪魔して動けない。少数の家来と女たちを連れた秀虎は結局三の城へ。そこに太郎と次郎の連合軍が襲いかかる。

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草迷宮

第28回 東京国際映画祭 寺山修司生誕80年 TERAYAMA FILMS

寺山修司が描く母と子の禁断の関係

TERAYAMA FILMS

 ひとりの青年が、子供の頃に聴いた手まり歌の歌詞を訪ね歩いている。それは母が口ずさんでいた歌。その旋律はかすかに記憶の中に残っているが、歌詞の内容は忘却の彼方に消え去ってしまった。そもそも母を知らない人たちに母の歌を教えてもらおうというのだから、どこの誰を訪ねたところでこれは雲をつかむような話だ。旅の中で思い出されるのは、美しかった母の面影。父のいない家庭で、母は女手ひとつで自分を育ててくれた。家の土蔵で暮らす千代女という名の若い狂女に襲われ、大あわてで逃げ出したこともあった。そのことを話すと、母は厳しく自分を叱りつけたものだ。脱走兵と心中した少女の面影。その脱走兵の姿は、なぜか自分の父の姿とだぶるのだ。手まり歌の手掛かりは、追いかけていくと手もとから逃げ出してしまう。ひょっとして、すべてが夢だったのではないかと思うほどだ。母との思い出は、どこまでが本当なのだろう? 青年の旅は終わらない。

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