キッド・クラフ 〜少年パッキャオ

第28回 東京国際映画祭 CROSSCUT ASIA #02 熱風!フィリピン

人気ボクサー、マニー・パッキャオの伝記映画

KID KULAFU

 1978年、エマヌエル・パッキャオはミンダナオ島の山間部で貧しい農家に生まれた。付近がゲリラと政府軍の紛争地にり、一家は大都市ジェネラル・サントスに移住。しかし都会での生活に馴染めない父は家に寄りつかなくなり、家族の生活はもっぱら母が支えていた。ある日、母が心臓病で倒れる。エマヌエルは薬代を稼ぐため、街頭の草ボクシング試合に出場した。リングネームは「キッド・クラフ」。これをきっかけに、エマヌエルは本格的にボクシングにのめり込んで行く。それから数年後、彼はマニラのボクシングジムに寝泊まりしながらトレーニングを続け、近くの工場で働いて金を故郷に仕送りする生活を続けていた。だがプロとしてデビューする機会は、なかなかやって来ない。先の見えない日々の中で、酒やタバコの味を覚えるボクサーの卵たち。そんな生活に嫌気が差して、脱落していく仲間たちもいる。だがエマヌエルにとうとうデビューの日がやって来る。

 今年5月にラスベガスでメィウェザーと「世紀の対戦」を行った、フィリピンの国民的な英雄マニー・パッキャオの伝記映画。極貧の家庭に生まれてホームレス同然の暮らしをしていた少年が、ボクシングと出会って頭角を現し、プロとして活躍するようになるまでを描く。この手の伝記映画の常で、これがどの程度事実に即したものになっているのかは不明だ。国民的なヒーローをあまり悪くは描けないだろうし、この映画の場合は関係者のほとんどが現役、あるいは存命中なのだ。映画としてはまとまりの悪いところもある。特に主人公がマニラに行ってからは、若いボクサー仲間が急に増えて見分けが付かなくなってしまう。フィリピン人の顔の見分けが付かないというわけではなく、登場するキャラクターに印象的なエピソードか明確に紐付けられておらず、主人公以外はすべてが「その他大勢」の中に埋もれてしまうのだ。もう少し人物や相互の関係性を整理してほしかった。

 主人公のエマヌエルを演じたブーボイ・ヴァリャーは子役としてキャリアの長い俳優らしいが、こうしたスポーツ映画はキャリアや演技力だけでは通用しない。ボクサーの役をやるには、ボクサーとしての体格や身のこなしを身に着けなければならないからだ。しかしその点で、この映画は結構見応えのあるものになっている。主人公がボクシングの基礎を学びはじめ、パンチもガードもまるでユルユルの素人だった時期から、幾多の試合をこなして若いボクサーとして成功へのステップを駆け上がっていくまでの身のこなしの変化がきちんと描けている。映画終盤の試合シーンや、映画のラストを締めくくるシャドーボクシングなどはいっぱしのものだ。体格がボクサーらしい筋骨隆々タイプではないのだが、パッキャオは16歳の時にライトフライ級でデビューし、その後は体の成長に合わせてウェルター級まで階級を上げている選手。だから若い頃の体は未熟でもいいのだと思う。

(原題:Kid Kulafu)

神楽座(KADOKAWA富士見ビル)にて
配給:未定

2015年|1時間48分|フィリピン|カラー|シネスコ
公式HP: http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=173
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4061876/

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