スリー・オブ・アス

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

政治亡命者の視点から見たイラン現代史

NOUS TROIS OU RIEN

 1970年代のイラン。青年弁護士イバットは、国王の独裁に抗議して民主化を求める学生組織のメンバーだった。しかし当時は政府批判がタブーであり、政治犯として逮捕されたイバットは懲役10年の判決を受ける羽目になる。服役中に国内では反政府運動が高まり、彼が7年半の服役を終えて刑務所の外に出てきた直後、ついに国王は国外に亡命して国家体制は刷新された。だがその後のイランを支配したのは、民主主義とはほど遠いイスラム国家体制。イバットは再び反体制運動に身を投じ、警察に追われることになった。結婚して子供も生まれたが、もはやイランにイバットたちの居場所はない。彼は同じ反体制派であるクルド人たちの手を借りてトルコへの国境を越え、さらにフランスへと亡命する。暮らし始めたのはパリ郊外の低所得者向けアパート。必死にフランス語を学び、勉強してフランスの弁護士資格も取った。やがて彼は地域のNPOで働き始めることになる。

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神様の思し召し

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

息子を洗脳した神父の正体は?

Se Dio Vuole

 心臓外科医のトンマーゾは大の自信家だ。患者の家族から手術の成功を「奇跡です!」と称賛されても、「奇跡じゃない。俺の腕が良かったんだ」と言い返してケロリ。家の中でも当然彼が一番威張っているのだが、その内情は穏やかではない。最近気になるのは、医大生の息子アンドレアが夜な夜な友人と出歩くことだ。息子は同性愛者かもしれない。いや、きっとそうだ。だがアンドレアの口から出たのは、「神学校に行って聖職者になりたい」という決意表明。その場では息子の意思を尊重してみせたトンマーゾだが、無神論者で教会を毛嫌いしている彼の心は「息子が教会に洗脳されてしまった!」という怒りで一杯だ。。その犯人は、息子が通う教会のピエトロ神父に違いない。神父なんて一皮むけば、人間の弱みに付け込むろくでもない連中だ。その実態を暴けば息子も改心すると考えたトンマーゾは、ピエトロ神父の素性を調べる。なんと神父には、犯罪歴があったのだ。

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ニーゼ

第28回 東京国際映画祭 コンペティション

実在した女性精神科医の孤独な戦い

Nise - O Coração da Loucura

 1944年、リオデジャネイロ郊外の精神病院。着任したばかりの女性精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラは、病院内の悲惨な様子に驚かされる。病棟は清掃が行き届かず不潔なままに放置され、患者たちは動物のように檻に閉じ込められている。治療は当時最先端の技術とされたロボトミー手術や電気ショック療法が主流で、それによって患者がおとなしくなれば「治癒した」とみなされていた。これらの手法に異を唱えた彼女は、病院を去るか、低賃金で作業療法の部署を担当するかの選択を迫られる。彼女は迷わず後者を選び、非協力的な看護師に手を焼きながら、物置同然だった療法室の清掃から手を付けるのだった。暴力で患者を威圧する病院の方針に逆らって、彼女は患者を伸び伸びと好きなようにさせる。他の医師は「患者と遊んでいるだけだ」は馬鹿にするか、少数ながら彼女に理解を示し協力するスタッフも現れる。間もなくニーゼは、芸術療法に力を入れはじめた。

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