ちえりとチェリー(併映:チェブラーシカ動物園へ行く)

第28回 東京国際映画祭 パノラマ

小6の少女ちえりが土蔵の中で大冒険!

ちえりとチェリー

 小学6年生のちえりは、母に連れられて久しぶりに父の実家だった東北を訪れる。ちえりが幼い頃に死んだ父の七回忌の法要のためだ。いとことケンカして母に叱られたちえりは、寺には行かずひとり家で留守番をすることになった。ひとりでも恐くない。なぜなら、ちえりにはいつだって友だちのチェリーがついているからだ。チェリーは古びたウサギのぬいぐるみ。しかしちえりの豊かな想像力のおかげで、チェリーは人間の大人と同じ背丈になり、優しく力強くちえりを見守ってくれる存在になるのだ。ちえりとチェリーは、さっそく家の中の探検に出かける。天井板の節穴は獰猛なカラスに早変わり。物置の片隅にいたネズミは、ねずざえもんと名付けられてふたりの仲間になる。土蔵で出会ったネコは、漆黒の体に緑色の目が輝くレディ・エメラルドだ。だが土蔵にいたのは彼女だけではない。おなかの大きなお母さんイヌが、子犬がなかなか生まれなくて苦しんでいたのだ。

 『劇場版チェブラーシカ』(2010)の中村誠監督最新作は、東北地方の古い家で小学生の女の子が大冒険をする人形アニメーションだ。主人公の女の子がウサギのぬいぐるみを抱いてあれこれ想像を巡らせると、その想像した世界が彼女の周囲で現実になる。これはダニー・ケイの『虹を掴む男』(1947)などにもある設定だが、人形アニメだと「ポケタポケタポケタ」などと呪文を唱えなくても、現実とイマジネーションの世界が完全に連続した世界として描ける。主人公の心の中で起きた冒険を、観客は現実に起きた冒険と区別せずに受け入れることができる。世間ではしばしば「子供には現実と虚構の区別がつかない」などと言うが、現実の世界から想像の世界にひとっ飛びするのに、本当のところ大人も子供も関係ない。その証拠に我々大人も小説や映画やテレビドラマの中の虚構の出来事に接して、笑ったり、泣いたり、憤ったり、勇気づけられたりするではないか。

 人形アニメ独特の動きや造形は、まるで夢の世界のようだ。この映画で一番の見どころは、主人公が心の中で作り出した怪物ドンドラベッコとの対決。この動きと造形がまさに悪夢のようだ。物語のテーマもシンプル。主人公は自分の心の中に飼っていた怪物との戦いに勝利し、父の死の悲しみと苦しみを乗り越えて一歩大人へと成長する。いのちの火は次の世代に受け継がれ、永遠に生き続けることになる。年年歳歳花相似たり。何年たっても、同じように花は咲き、また同じように花は散る。しかし咲く花と散る花とは同じではない。歳歳年年人同じからず。人間の世界にも死ぬ者がいて、生まれる者がいる。人はそれを変化だと感じるが、じつは人の世も花と同じなのだ。ちえりは中学生になる。ぬいぐるみからは卒業する。でもチェリーは相変わらず、ちえりにとっての友だちであり続けるのだ。

 併映の『チェブラーシカ動物園へ行く』も中村監督作品。これも楽しい作品だ。

お台場シネマメディアージュ(スクリーン13)にて
配給:フロンティアワークス
2015年|54分+18分|日本|カラー|ビスタサイズ
映画祭公式HP: http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=109
公式HP: http://www.chieriandcherry.com
IMDb: http://www.imdb.com/name/nm1558799/

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