あの頃エッフェル塔の下で

12月19日(土)公開予定 Bunkamuraル・シネマ

甘い恋が生み出す深い心の傷

あの頃エッフェル塔の下で

 人類学者として世界中を飛び回っていたポール・デダリュスは、8年ぶりに帰国したパリの空港で警備員に身柄を拘束される。所持していたパスポートと同じものが2通あり、自分と同じポール・デダリュスという人物がもうひとりいる。このせいでポールにはスパイかテロリストの容疑がかけられたのだ。「あなたは以前パスポートを紛失して再発行手続きを行いませんでしたか?」と問われたポールは、自分の若き日の出来事を思い出していく。少年の日の苦い思い出。高校生の頃に親友とソ連旅行に出かけた際のちょっとした冒険。そして大学生の時に付き合い始めた初恋の女性エステルとの、数年に渡る甘美で苦しい恋の思い出……。彼女は妹の同級生で、当時から複数の男性と交際の噂が絶えない少女だった。「僕はつまらない男さ。でも命がけで君を愛するよ!」。こうしてふたりは付き合い始める。だがエステルの住む故郷の町と大学のあるパリは、あまりにも遠かった。

 監督・脚本はアルノー・デプレシャンで、物語は彼の出世作『そして僕は恋をする』(1996)の続編でありプレストーリーのような内容になっている。主人公は『そして僕は〜』と同じポール・デダリュスで、演じているのも同じマチュー・アマルリック。『そして僕は〜』のポールは29歳で、パリで仕事をして、恋人のエステル(演じたのはエマニュエル・ドゥヴォス)とは10年の付き合い……という設定だった。今回の映画ではポールとエステルが別れたことになっているが、結局関係はその後もずるずる続いているわけだ。ただ本当のところ、今回の映画と前作が完全に連続した関係になっているのかはよくわからない。映画は最初から「もうひとりのポール・デダリュスがいる」という話で幕を開けるのだが、この映画もそうした「もうひとりのポール」の物語だと思った方がいいのかもしれない。これはこれで、独立したひとつの作品として楽しむべきものだと思う。

 出演者はオーディションで選ばれた若い俳優が多く、若き日のポールを演じるカンタン・ドルメールやエステル役のルー・ロワ=ルコリネも本作が初主演という新人。ポールは若いイケメン俳優だが、ロワ=ルコリネは少し泥臭さの感じられる「田舎町の美少女」という感じなのがいい。性的な奔放さとポールに対する一途な愛が同居する難しい役だが、それがちゃんと魅力的なキャラクターになっているのは演者はもちろん、デプレシャン監督のこの役に対する思い入れがあればこそだろう。

 映画で描かれているのは、恋のパラドックスの残酷さ。主人公たちふたりは互いに掛け替えのない関係でありながら、ポールはエステルとの距離を求め、エステルはいつもポールと一緒にいたいと願う。あやういバランスの上にある幼い恋。その痛みは10年たち、20年たっても消えることがない。それは人格的にまだ未熟な青春時代だからこそ存在する、唯一無二の恋愛関係だったのだ。

(原題:Trois souvenirs de ma jeunesse)

ショウゲート試写室にて
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
2015年|2時間3分|フランス|カラー|スコープ|5.1ch
公式HP: http://www.cetera.co.jp/eiffel/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4048050/

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